暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
船上から戦場へ
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が座るものだと思しきワークデスクが鎮座していた。ワークデスクの上には分厚い医学書が理路整然と並べられ、この船の船医が几帳面だという事実が伺える。いやまぁ、所詮NPCなのだけれど。

素早く、部屋唯一のドアに張り付いて外の様子に耳をそば立てるが、やはり外にも何の気配もない。この部屋の重要度は、侵入者達にとってそう高くはないらしい。当たり前といえば当たり前か。

そこまでの安全確認を踏まえた上で、ユウキはドアに施錠(ロック)をし、部屋の中をうろつきまわっている少年に頷きかける。

同じく頷き返した少年は、カーテンを引いてベッドの上に腰掛けた。ユウキも、向かい合うように座る。

すぐさま口を開いたのは、ユウキ。

「レン、さっきはごめ――――」

しかし、のんびりと払われた手によってせき止められてしまう。

「いいっていいって。誰にでも失敗はあるよ、ユウキねーちゃん。それより今優先する事は、これからのことのはずだよ」

「……う、うん」

首肯したものの、少女の心にはわだかまりが残る。

ユウキは、レンに《選ばれなかった》少女だ。

SAO時代、いつでも決まって前を歩き、そしてその歩く道の方向を一度違えたこの少年を導く役目は、自分だったはずだ。それは年の差とか、自分が年長だからとか、そんな小さな事が理由なのではない。

ただ、この少年を一番良く知っているのは自分だから。

だからこそ、少年に追いつこうと少女は血の滲むような鍛錬や死闘を積み重ねてきた。少年の、一度違えた道に点在する強者達からは、鼻で笑われるようなものでなかったかもしれないが。

それでも追いついた時、少年はもう《救われていた》。

一度離してしまった手を、握ってくれた者がいた。その人はもういないのだけれど、それでも闇の中ですすり泣いていた少年を助け出した。その事実は変わらない。

マイやカグラ、そしてリータ。

レンの本当の意味での理解者は、いつだって自分以外の者が担う。

それが堪らなく寂しく、そして同時に――――

恐ろしい。

「――――ん。ユウキねーちゃん!」

「ふぁ、ふぁいっ!」

物思いから現実へ回帰したユウキは、視界一杯に近づいたレンの顔を見る。

「わ、わっ!?」

「ボーッとしちゃってどうしたのさ。…………ま、いいや。武器になるようなものはこれくらいしか見当たらなかったよ」

そう言いつつ少年がトランプのように広げて見せたのは、手術の時に使うメスのようだ。アルミか何かわからない素材でできた小さな刀身が蛍光灯の光を浴びて薄っぺらい光を放っている。

「そ、そんなのどこにあったの?」

「戸棚の一番奥にけっこうあったよ〜」

「戸棚って…………うわっ」

食器棚みたいな
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