DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第十四話
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の縁取りの窓の向こうから、月の光が入ってくる。
まるで、子供部屋。ハクアの呟きも理解できた。この部屋に入る前は痛いほどに感じられた《神気》は、いまや全く感じられなかった。
そして本棚よりも目を引くのは――――部屋の中央に備えられた、巨大な天蓋付きベッド。絹のような素材のカーテンが垂れ下がったそのベッドは、一見して高級品だと分かるもの。
そして、その中から――――紅蓮色の双眼が、こちらを射抜いた。
「……!」
「ひっ……」
オバケの類が苦手なハクナが縮こまる。だが、そこにいたのは、幽霊などではなかった。
外跳ねの、艶やかな金髪。あどけない顔立ち。まだ未発達な四肢を、ピンク色のパジャマに包んでいる。抱えているのは巨大な絵本。
それは、年のころ十歳ほどの少女だった。どこかで見た様な顔立ちの気がしなくもないが、ハクガに幼女の知り合いはいないので気のせいだと否定する。この部屋の主が、彼女であることは、もはや疑いようもない。
しばらく見つめていると、少女はにっこり、と天使のような笑顔をみせて、語りかけてきた。
「……こんばんは」
「……こんばん、は?」
思わず挨拶をし返してしまう。
「君は、此処に住んでいるのですか?」
「うん、そうだよ。ミナトはね、ずーっと、此処に住んでるの」
何の疑問も抱いていないかのように……少女は、答えた。
ずっと、此処に住んでいる。それは二種類の意味を持っていた。
一つは、今までずっと、この子供部屋に住んでいた、という事実。もう一つは、これからも『ずっとここに住んでいる』という、残酷な未来。
この少女は、未来永劫此処にいることを定められているのだ。よくよく見れば、彼女の腕には、漆黒の大きな手かせがはまっている。
「なんて、非道な……」
ハクアがわななきながら声を漏らす。《白亜宮》は、幼い子供を、ずっとここに閉じ込めているのだ、という事実が、彼女に衝撃を与えているのだ。
ハクアは駆け出すと、天蓋付きベッドから少女を下ろした。
「わっ! お姉ちゃん、どうしたの……?」
「もう大丈夫ですよ。私たちが来ましたから、ここから出ることができますよ」
少女を抱きしめながら、ハクアは優しく彼女に告げた。
しかし少女は、不思議そうな顔をして、答える。
「……どうして? ここからは、出ちゃいけないんだよ?」
「可哀そうに……命令されているんですね? 大丈夫です。私たちが《白亜宮》を……《主》を斃しますから」
その瞬間。
気配が、大きく変わった。
「……お父様を、殺すの?」
重圧の主は、ハクアに抱かれた少女だった。低く落とされた声で、彼女は問う。
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