第三章
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」
強くはっきりとした言葉になっていた。
「だからこそ。御期待下さい」
彼はこう言うのだった。そしてそれはエリザベータも同じであった。
「何があってもですか」
「そうです」
毅然とした声であった。凛とした美貌を持つ黄金色の豊かな髪に青い湖の瞳を持っている。その目で今語っていた。白い服でその見事な身体を包んでいる。
「ロシアにいた頃からワーグナーとは縁がありましたが」
「そうでしたね」
エリザベータは昔からワーグナーを歌ってきた。彼女の声がそれに合っていたのだ。だから昔からワーグナーを歌ってこれたのである。
「白い服を着て歌えることが一番嬉しいです」
「白がお好きなのですね」
「はい」
ここでにこりと微笑んでみせる。
「子供の頃にワーグナーを観てからです」
「そうだったのですか」
彼女にインタビューをしているのは若い女性のジャーナリストであった。
「それから白の服に対して憧れを持っていましたから」
「では今とても幸せですか?」
「はい、とても幸せです」
その一見怖い顔をにこりとさせる姿が実に似合っていた。意外な程に。まるで戦いの女神であるかの様に。どちらかというとそうした美貌の持ち主であった。
「だからこそ。このエルザも歌います」
「エルザも以前から歌われていますね」
「そうですね」
自分でもそれを認めて頷く。
「思えば最初にここに来たのもこのエルザでした」
「そうでしたね」
彼女はバイロイトははじめてではない。何度も歌ってきている。だから慣れていると言えば慣れているのである。
「それからワーグナーのヒロインを歌ってきましたがまたエルザを歌わせて頂くことになり」
「感慨もひとしおでしょうか」
「というよりは今の時点で最高のエルザを目指したいと思います」
それが今の彼女の願いであった。
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