二十一章
鬼の出所理由
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「では、総員騎乗!後れを取り戻すぞ!」
甲府の街を抜けて俺たちは一路南へ向かう。南へ行く街道も、越後に続く道と同じようにしっかりと整備されていて、月明かりの下でもかなりの速を出すことができた。と言っても馬並みの速度だけどね。
「でさ、春日」
「なんでありましょう?」
「兎々から大まかな事しか聞いていないんだが、どうして甲斐に鬼が出るんだ?」
「ふむ・・・・それは知っておいた方がよろしいでしょうな。・・・・構いませんかな、お屋形様」
「ええ。頼みます」
「知っての通り、武田は甲斐を本拠とし、信州の大半をも支配しておりまする。そして先代より続く悲願である、甲斐信濃の統一を目指すべく今も日夜戦っている・・・・ここまでは宜しいか?」
「はい」
「とはいえ、信濃の制圧は決して容易い事業ではない。なかでも拙らの大望を阻む二つの壁が、忌々しい越後の長尾景虎と・・・・」
「・・・・鬼、という事か」
「左様。初めて遭うたのは、東信濃の砥石城にて、辺りを治める村上と戦をしたときでござった」
「あいつら、突然現れたのら!」
「我らもその時は鬼の事など知りもしませんでな。故に兵や馬は恐慌を起こし、被害も大きく、悔しいかな撤退を選ぶしかなかった」
「その砥石城は今はどうなっている?」
「武田が二度も負けたりしないのら!とっくに落として、鬼ろもも全部根切りにしてやったのら!」
「兎々の言う通り。それが、織田が田楽狭間で今川を破る少し前に起きた出来事にござる」
「砥石崩れの噂は聞いていましたが、まさかそのような真相が・・・・」
砥石崩れ・・・・砥石城を巡る村上軍と武田軍の攻防戦のこと。武田は手痛い反撃を喰らい、多くの武士・兵士を失ってしまった。
「武田の数少ない負け戦の一つだ」
「・・・・尾張に鬼が出るようになったのも、田楽狭間の少し前と聞いたな」
「こちらもより多くの情報を集めようと、村上の一門を捕えましたが・・・・誰一人として詳細を知る者はおらず。ただ、鬼を引き連れた南蛮人がふらりと現れ、武田と戦うなら力を貸してやると言われた、という情報が手に入っただけでした」
「その南蛮人がザビエルという事?」
「名前は聞かされていないそうです。こちらでも足取りを追いましたが、それ以上の事は・・・・」
そう言って、晴信(影武者である信廉)は小さく首を振った。ザビエルが東山道を通って鬼の種を撒いて回ったと推測される。それなら尾張を抜けて信濃という流れが自然だろう。だいたいの出現パターンやタイミングもそうだと思うし。
「そのような外法に手を出すとは・・・・」
「けろ、その鬼がまた出てくるようになったのら」
「根切りにしたんじゃなかったですか?
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