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白鳥の恋
第二章
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回はだ」
 今回の演奏についての話になった。
「ローエングリンがよさそうだな」
「ああ、あれだな」
 その中での演目の一つローエングリンについての話になった。
「毎回バイロイトの演出は見ものだが」
「そうだな」
 これもまた有名である。バイロイトの演出は何かと冒険をすることで知られている。これは第二次世界大戦からでありヴィーラント=ワーグナーからはじまる。もっともこれもまた政治的な事情がありナチス的色彩を消す必要もあったからだ。ワーグナーからはどうしても離れられない話である。
「今回は舞台だけではないな」
「歌手もだな」
 歌手についても言及された。
「今回のタイトルロールは」
「あの男だな」
 タイトルロールとは所謂主役、表題役のことである。ローエングリンならば白鳥の騎士ローエングリンとなるのである。最も重要な役なのは言うまでもない。
「アーダベルト=シュトルツィングだったな」
「それとエリザベータ=タラーソワか」
「そう、あの二人だ」
 その二人について言及された。
「ドイツとロシアがそれぞれ誇る若手のワーグナー歌手だ」
「まだ三十にもいっていないのだったな」
「ああ、まだだ」
 今度は年齢に関して言及された。
「二十九だからギリギリだな」
「二十九か」
「しかも二人共まだ独身だ」
 それについても言われる。二人の言うことはかなり多岐でしかも細かい。
「ひょっとしたらな」
「ははは、それはあるまい」
 しかしその言葉はもう一方によって否定された。
「ないか」
「ローエングリンだぞ」
 まずは上演される作品が出された。
「そんな話になるか」
「それもそうか」
「そうだ。他の作曲家のものならともかくワーグナーだ」
 こうも言われる。
「両方共死ぬのならともかく結ばれたりするものか」
「そうなるのはマイスタージンガーだけか」
 ワーグナー唯一の喜劇である作品だ。かなり長い。
「全くないと言って過言ではないな」
「そうだな。全くな」
「では。そういうのは期待せずに観るとするか」
「観るのは二人の歌と演技だ」
 オペラにおいてはその二つを見るのは言うまでもなかった。
「それを楽しむとしよう」
「そうさせてもらうか。さて」
 ここでまた話が変わった。
「上演の日まで暫くは」
「ゆっくりさせてもらうとするか」
 そう言い合う。
「ビールでいい店を知っているか?」
「ワインなら知っているぞ」
 酒の話になった。
「モーゼルでいいのを置いてある店がな」
「モーゼルか」
「どうだ?」
 あらためてそれを尋ねるのだった。
「嫌なら他の店も知っているがな」
「いや、それでいい」
 しかし彼はモーゼルでいいと言う。それどころか言葉からはまんざらでもないといった様子
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