第五章
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る。赤い太陽が公園を照らしている。その光は昼のそれの様に強いものではなかったがまだ熱は残っていた。二人はバッグを自分達の足の前に置き、制服姿で話しはじめた。
「最近のことだけれどね」
「はい」
まずは由美子が口を開いた。杏奈がそれに応える。
「何て言ったらいいかなあ」
だが由美子はここで指を傾げた。そして戸惑いながら言う。
「お互い嫌な気持ちよね」
「はい」
それは二人共わかっていた。
「どうしてこう思っているのかまでわからなくなってきてるけど」
「何でなんですかね」
杏奈は言った。
「私もわからないです」
「私もよ。変な気持ちよ」
由美子は眉を顰めさせていた。整った顔の中央に深い皺が刻まれる。
「裏切ってるみたい、って言うのかしら」
「裏切ってる」
「ええ、私はそう感じるのよ」
由美子は考えながら述べた。
「どういうわけかね、そう思えるのよ」
「私も同じ感じです」
杏奈はここで言った。
「私は裏切られたって」
「裏切られた」
「はい、先輩は裏切ったって感じられているんですよね」
「ええ」
由美子は隣に座り、自分を見ている杏奈に対して答えた。
「私に対して」
「そうよ」
真剣な顔で頷く。
「私は。先輩に裏切られたって思っていました」
「私に、なのね」
「はい。それでとても嫌な気持ちでした」
「そうね。それは私もだったわ」
だがこれは互いに質の違う気持ちであった。杏奈は裏切られ、それを恨めしく思う気持ちであり、そして由美子のそれは裏切ったことを悔やむ気持ちだったのだ。二人の嫌な気持ちは根は同じであるかも知れないがその思いはまたそれぞれ違ったものであったのだ。
「何でそう思ったのかしら」
「この前先輩デートしていましたよね」
「え、ええ」
由美子はそれに応えた。少し慌てた声になっていた。
「ここでね」
「私、それを見て」
「そうだったの」
「それで。嫌な気持ちになって。変ですよね」
「それは私もよ」
「先輩も」
「デートしてる時。何か」
杏奈から顔を離し、真下を俯いて言った。
「おかしな気持ちになって」
「はあ」
「変よね、別に誰も裏切ってなんかいないのに」
「私も。裏切られてなんかいないのに」
「浮気したみたいに」
「浮気されたみたいに」
ここで二人は気付いた。
「えっ!?」
慌てて顔を見合わせる。
「浮気って」
「そんな」
二人は互いにはっとした。
「おかしいわよね、私達女の子なのに」
「恋人同士みたいに」
一度顔を離す。そしてそれぞれ俯いて言う。顔は真っ赤である。
「けれど」
その心は否定することは出来なかった。
「今まで嫌な気持ちだったのは」
「ずっともやもやしていたのは」
「浮気したから
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