十八章 幕間劇
笑顔
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いた。話したい事はあるが二人きりになると言葉が浮かんでこないな。
「小波」
「はい」
互いに川面から目を離さないまま、細切れの言葉を交わす。
「いろいろとありがとな」
春日山城下の諜報活動もあるが、これまでいろいろと手伝ってくれたこともある。みんなは慣れない仕事をよく頑張ったと思うが、諜報のプロである小波の働きがやはり大きいと思う。
「いえ。それが自分の仕事ですので」
相変わらずの小波だ。褒めてもけして奢らない。あの夜、少しは柔らかくなったと思ったが、そう上手くいかないようだ。作戦外ではよそよそしくなっている。小波は黙っているが、横顔を見ると憂いに縁取られていたけど。小波の立場や性格を考えれば、その理由は容易に見当がつく。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
また長い沈黙。聞こえるのは川の流れによるせせらぎだけ。あの夜、二人の絆は深まったと思ったが、俺と小波の事情は複雑だ。全てが想いだけで解決することはない。小波が俺を想ってくれるのは分かっているし、その気持ちを押し殺してるのも分かっている。身分の違いに、二人の主、そして大義の名の下の大勢の恋人であって未来の嫁達。
「ほう・・・」
一瞬指が触れたので、それを逃がさないと思い、小波の指を触れた。いつしか遠慮がちに近づいてきてくれてたけど。
「あ・・・・」
ため息のように聞こえたが、触れることによって小波が考えていることが手に取って分かる。再び沈黙はするが、今度は温かい時間だ。言葉は交わさなくともこの温もりだけで伝わってくる。これだけでも俺と小波の気持ちが同じというのが分かる。
「小波・・・・」
「ご主人様・・・」
二人の指は重なるがここで邪魔者が発生した。跳ねたような魚が来たのだ。
「なんだ、魚か」
「鱒、でしょうか」
「良く分かるな」
「野営中、川魚は貴重な食料になりますので」
「食べられる物と食べられない物が判断できるのは凄いと思うな。小波にとっては基本中の基本なのかもしれないけど」
「・・・(コクッ)」
「鱒ねぇ。採りたてならきっとおいしいだろうな」
「ご所望とあれば・・・・」
小波が苦無を抜こうとする。
「別に今食べたいわけじゃないからいいって」
「そうでしたか」
ほんとに忠義が篤いというか、素直だな。
「今度は一緒に食べような」
「は、はい」
鱒のおかげで雰囲気はいい方に向いたようだ。水の精霊も雰囲気をよくしてくれたみたいだし。
「この国は自然の恵みの豊かなところですね。山にも川にも生気が満ち溢れています」
「ああ」
俺は頷く。確かに水もきれいだし、地には食い物も採れる。風は気持ちいいく
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