まえがき
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おり、いままで、再生パルプの原料になりかかった貴重な古書籍とか、作家の手書き原稿などをいくつも発見、救出した実績をもっている。むろん友人はその種のお宝を、今度は好事家に高く売りつけて、生計のたしにしているのである。
友人は、この原稿は、東京都内にある田中先生の仕事場から出た反故紙のなかから発見されたものだ、と力説した。
「しかしねえ……。田中先生の署名もなにもない。もし万一仮に、これが本当に田中先生の仕事場から回収されたものとしても、もしかしたら銀英伝ファンが田中先生に送りつけた“ぼくの考えた最強の銀英伝”のたぐいかもしれないじゃない?」
「いや、この筆跡を見てみろ。これは、まちがいなく田中先生の筆跡だ!」
「そうかなぁ……」
おれの手元には、1989年の夏に福井県の「だるまや百貨店」で開催された田中先生のサインセールで入手した、直筆サイン入り「マヴァール年代記」1・2・3がある。高校3年生の夏休み、3日間だけ受験勉強を放りだし、友人とふたり、都内から、上越新幹線線・北陸本線経由でかけつけたものだった……。
本の見返しには、先生が書いてくれたおれや先生ご自身の名前、1989年8月16日の日付、「だるまや百貨店にて」などの文字に、篆書体でほられた「田中芳樹」の朱印などが、20年以上たったいまでも鮮やかに輝いている。
しかし、それらの文字を、「第三巻 落日編」の原稿の文字とをくらべてみても、おれにはよくわからない。
「それでだ」
友人はいう。
「この作品は、ぜひ世にでるべきだ」
「それで?」
「おれ、Webサイトやブログ関係よくわからない」
「うん、それで?」
「君に入力と公開を頼んでいいかな?」
「作者名は誰の名義で?」
「むろん、田中芳樹先生だ。“田中芳樹先生の、銀英伝の未発表原稿を一挙UP!!”って」
「ダメ!ダメダメダメダメ!」
「……なんで?」
「きまってるじゃん!これが田中芳樹先生の手書き原稿だなんて、お前が思ってるだけじゃん」
「いや、これは間違いなく田中芳樹先生の自筆生原稿だよっ!さっきも説明したとおり……」
「いや、もうその解説はいいよ。それに、万一、ホンモノの原稿だったとしても、先生ご本人はご存命なんだから、勝手に公開なんかしたら問題じゃん。とっくの昔に死んでる明治・大正の大文豪の原稿じゃあるまいし」
それに、田中芳樹先生は、銀英伝の作品世界について、つぎのように述べておられる。
ここでぜひ申し上げておくべきことがあります。それは、私が、書かれざるストーリーに哀惜と未練をいだいている以上に、現にできあがった作品世界に愛着をもっている、ということです。
〜トクマ・ノベルス版第5巻あとがき〜
こんな
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