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女の子の恋
第三章
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イッスルが鳴った。こうして準決勝がはじまった。
 試合は一進一退であった。流石に相手は強い。だが杏奈もその持ち前の反射神経を使い何とかボールに追いすがる。由美子は後ろでそんな杏奈をフォローする。二人は動きもぴったりと合っており、それで相手と五分に渡り合っていた。そのまま試合は進んだ。
 最後の勝負。どちらかがポイントを取れば全ては決まるという場面になった。ここで相手がスマッシュを放った。
「これなら!」
 いける、杏奈はそう思った。さっとボールに飛びつく。
 だが一瞬だがボールの方が速かった。ボールはラケットを通り抜け、コートも抜けてしまった。残念なことにポイントを取られてしまった。杏奈達は最後の最後で試合に敗れてしまったのであった。
「そんな、ここまで来て」
 杏奈はそのままコートに崩れてしまった。泣きそうになる。だがここで後ろにいた由美子が声をかけてきた。
「泣いては駄目よ、杉本さん」
「先輩」
 その声に顔をあげる。するとそこには由美子が立っていた。
「力を出し尽くしたんでしょう?」
「けれど」
「けれどはないわ。力を出し尽くして負けたのなら仕方はないわ」
 由美子はこう言った。
「負けたのはね、確かに口惜しいわ」
「はい」
 杏奈は立ち上がってそれに頷いた。
「けれど、さっきも言ったわね」
「結果ですか」
「そう、その結果が出るまではね、負けても泣いては駄目なのよ」
「どうしてですか?」
「泣くのはね、嬉しい時にだけ泣くべきだからよ」
 由美子はにこりと微笑んでこう言った。
「嬉しい時にですか?」
「そう、悲しい時はね、泣いちゃ駄目なのよ。その時は堪えるの」
「堪える」
「そして堪えて堪えて。嬉しい時に泣くのよ。そうでなければ泣いちゃ駄目なのよ」
 それがどうしてか杏奈にはわからなかった。だが由美子が今は泣いては駄目なのだと言っているのははっきりとわかった。そしてそれに素直に頷こうと思った。
「いいわね」
「わかりました」
 杏奈は決めた。頷いた。
「私、泣きません」
「そう、それでいいわ。泣く時は」
「次に勝った時。いえ、嬉しい時ですね」
「そうよ、いいわね」
 こうして杏奈は泣かなかった。そして同時に由美子に対する尊敬の念がさらに強くなった。前よりも彼女と一緒にいたがるようになりその仲はさらによくなった。彼女は完全に由美子にべったりといった状況であった。
「最近さあ」
 そんな日々の中幸平は由美子に対して言った。彼は夏休みの部活のない日に由美子とデートしていたのであった。二人は私服で街の公園を歩いていた。杏奈はこの時友達と遊びに行っていたらしい。


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