第二章
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そして由美子も彼女に声をかけてきた。
「先輩」
「努力すればね、必ず報われるってことよ。よく言われることだけれど」
彼女は優しい声でこう語った。
「貴女もそれが報われたってことよ」
「そうなんですか」
「ダブルスもお願いね」
「えっ」
その言葉にハッとした。見ればシングルだけでなくダブルの選手にも選ばれている。そのペアは何と由美子であった。
「先輩と・・・・・・」
「宜しくね」
由美子はまた声をかけてきた。
「一緒に優勝しましょう」
「優勝・・・・・・」
にわかには頭に入らない言葉であった。この前はじめたばかりの杏奈にとってはそれは本当に夢みたいな言葉であった。しかもペアを組むのが尊敬する由美子である。その彼女と一緒に組むだけでも信じられないというのに。杏奈は頭の中が真っ白になりそうだった。
「いいかしら、それで」
「は、はい」
ようやく我に返ってそれに応えた。
「私、頑張ります」
緊張した顔で言った。
「先輩の足を引っ張らないように」
「引っ張るなんてとんでもないわ」
ここで由美子は実はこう言うつもりはなかった。肩の力を抜いていきましょう、と力む彼女を宥めようと思ったのである。だがついこう言ってしまった。こう言うつもりはなかったというのに。何故か口に出してしまった。
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