番外編 泪に濡れる・マイ・ウェイ
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唐揚げを吐き出しそうになったのを慌てて口を手で塞いだ。
俺と箒はセシリアをちゃんと監視してたのに、なんでこんなことになる。
セシリアから目を離していたのは箒が俺を出迎えた時と俺が箒と部屋の奥で話していた時くらいだろう。
まさか……その短時間でセシリアはやらかしたのか?
「お味はいかがですか?」
とセシリアに聞かれたが、俺は心の中でお前に料理の才能はないと断言する。
金持ちなんだから自分で料理を作らず一生誰かに料理を作ってもらえと思っていた。
俺は鳥の唐揚げをほとんど噛まずに丸呑みし、席を立つとフラフラとしたおぼつかない足取りでキッチンに向かい――そして、蛇口から水を出すと自らの口を水に近づけガブ飲みした。
「アーサーさん? そんなに慌てて食べなくてもよろしくてよ」
というセシリアの声が聞こえたが、俺は慌てて食べたんじゃない。
これ以上噛んだら飲みこむ自信が俺にはなかっただけだ。
「味はどうだった?」
と箒が感想を聞いてくる。
俺は手の甲で口を拭い、俺の身に起こった恐怖の体験を語った。
「この世の食べ物じゃなかった。魔界の扉が開かれ、なにか得体の知れない物の呻き声が聞こえた気がした」
「そうか……なにか言い残すことはあるか?」
おい、俺を勝手に殺すな。
俺は一夏たちが巻き起こすラブコメ的展開のすべてを見ちゃいないんだ、それを見届けるまで死ぬつもりはないからな。
俺が箒の部屋を去る時、セシリアに対して送った言葉は料理をする人間なら当然するであろうことだった。
「料理をするなら味見しろ!」
フラフラする足元、俺は身体を支えるため壁に手をつき歩きつつ自分の部屋へと戻ったみれば、俺を待ち構えていたのは冒頭にあるように織斑先生だったというわけである。
織斑先生が部屋を立ち去り、普段と変わらぬ静寂に包まれた部屋で俺は電源の落ちたパソコンを眺めながら、
「織斑先生の魔手によって残念ながらパソコンの中身はこの世から消え失せた……だが、希望はある。俺にはバックアップがあるからな。パソコンを使う時にはこまめにバックアップせよ! というエロス神の啓示を受け、常日頃からバックアップを取るようにしていた。バックアップは最新のデータではないがすべてを失うよりはいいだろう。さすがはエロス神、俺を見捨ててはいなかった」
誰に聞かせるでもない独り言を呟く。
「ほう、バックアップか。やはりお前はそんな物を隠し持っていたか。どこに隠しているのかは知らんが、今すぐバックアップとやらを出してもらおうか」
卑怯だぞ! 織斑先生。
帰ったフリをするなんて。
だが、ここで俺がゴネだとしても無駄な足
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