番外編 泪に濡れる・マイ・ウェイ
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一夏をここに呼んで試食させたらどうだ」
「イヤだ!」
「なんでだよ」
「セシリアの料理がどんな味だったとしても、私以外が作った料理を一夏が食べる姿をみたくない」
と言った箒は俺から視線を逸らす。
その気持ちはわからんでもない、が……。
「だったら自分が試食しろよ!」
「それも……イヤだ」
箒はどうあっても俺を人身御供にするつもりか? 冗談ではないと思っていると、箒はこの通りだと言って頭を下げてくる。
そんな姿を見た俺は渋々といった感じでわかったよと呟いた。
料理が出来上がるまでの間、俺はイスに座りセシリアが変な動きをしないか監視していた。
セシリアを監視するのは当然だろう、誰しも自分の命は惜しいのだから。
箒もセシリアの側にいるし大丈夫だろうと思っていた。
箒は電話がかかってきて一時キッチンを離れたが、俺がちゃんとセシリアを監視している。
セシリアが斜め上の行動を取ろうものならハリセンアタックをお見舞いする予定だ。
が、セシリアに不審な行動は一切見られず料理は無事完成した。
箒とセシリアが作っていた料理は鳥の唐揚げ。
「お一ついかがですか?」
小皿に盛られた鳥の唐揚げと共に箸を俺に差し出すセシリアの顔は自信に満ち溢れた表情だった。
この時、俺はセシリアに対しどんな顔をしていたのか解らないが、頬の筋肉が引きつっていたに違いない。
俺の左手に乗っている小皿を見てみれば、とても美味しそうに見え――そして、なぜか光り輝く鳥の唐揚げが存在している。
どんな調理法によって目の前にある鳥の唐揚げが作り上げられたのだろうか……俺は考えてはみたもののまったく想像かつかなかった。
箸を握った俺の手はブルブルと震え――しかも、身体からは異常な発汗が認められる。
なぜかといえば、俺の脳裏にあの忌まわしき記憶が蘇っていたからだ。
そう、俺がIS学園転入初日に食べたセシリアお手製のサンドイッチの記憶が……。
俺は震える箸先をなんとか鳥の唐揚げに突き刺し、意を決して口へと運ぶ。
大丈夫だ。
俺と箒がセシリアをずっと監視してたじゃないか。
今思い返してみてもセシリアは変な動きはしていなかった。
今回は大丈夫なはずだ。
そう思っていた時期が俺にもあったのだが、俺の悲願とも懇願ともいえる願いは見事に打ち砕かれた。
噛むと確かに鳥の唐揚げの食感なのだが、味はなんというか……この世の物とは思えない、なじょうしがたい刺激が味蕾に襲いかかる。
なぜだろう、俺の見える景色は目眩でもしているかのように歪んで見えた。
俺はバランスを崩しそうになる身体をテーブルに手を着くことで支え、鳥の
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