第四章
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たのである。
「紫の光が。雨の中で」
「いや、雨が紫になったんだよ」
「どういうこと、それって」
「雨に元々の色はないから」
丈は言った。
「そこに色がついたんだよ。ネオンの光でね」
「それで紫の雨になったのね」
「そうさ、夜にしか降らない雨」
彼は言う。
「ネオンの中の雨。大人の雨だね」
「大人の雨、ね」
真砂子はそれを聞いてふと何かに気付いたようであった。
「私達みたいな大人の雨ね」
「そうだね。これは子供にはわからない雨だよ」
「雨にも色々あるのなんて。今知ったわ」
「色々あるさ、雨にも」
彼は応えた。
「大人にしかわからない雨もね」
「それじゃあ私はそれがわかる大人ってことね」
「だからバーに行けるんじゃないかな」
「心はどうかわからないけれど」
「紫の雨がそれを教えてくれるかもね」
「じゃあ」
その紫の光を掲げている店の看板を見ながら言った。
「それは貴方に教えてもらおうかしら」
「喜んで」
こうして二人はそのバーに入った。後には紫の雨が降っていた。夜の街の中で。そして二人の歩いた後を濡らし続けるのであった。
パープルレイン 完
2006・2・25
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