第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十九話 日は沈み……
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不比等と紅緒の対面に座っていた輝夜と妹紅は目の前で始まった私刑――――ではなく話し合いを見つめながら黙々と食事を続けている。
「止めなくていいの妹紅?」
煮魚を箸で切り分け口に運びながら輝夜は隣に座る妹紅に視線だけ向けながらそう聞いた。ちなみに今彼女が口にしている煮魚は二匹目だったりする。(空腹だった事と煮魚が美味しかった為一匹目はものの三分程で平らげている)
「割と何時もの事だから」
問われた妹紅も食事を続けながら母親に折檻されている父親に視線を向けると紅緒の膝立ち状態から放たれる拳が不比等の頬を左右順番で打ち抜いていた。
くぐもった悲鳴を上げる不比等を視界の端に捉えながら輝夜は妹紅に、
「何時もの事って……あんたも意外と大変ね」
「う〜んあんな性格とあんな見た目だけど結構尊敬できる所もあるのよ――――信じられないだろうけど」
「そうねちょっと俄かには信じられないわね」
そんな会話をしながら食事を進める二人の前で紅緒による私刑は佳境に入っていく。
「浮気はッ!許しませんッ!!」
「誤解だと言ってるではないかァァァァァッ!!」
藤原の屋敷に主である不比等の悲鳴が木霊した。その叫び声を聞いた屋敷に使える者達が『今日も一日平和だったな』と思ったのは何時もの事である。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
輝夜と妹紅は早々に食事を終え、じゃれ合う?不比等達を残し部屋を後にした。そして輝夜は妹紅に促され彼女の私室に通された後寝巻に着替え就寝の準備に入っていた。
「そういえば輝夜、貴女何で家出なんてしたのよ?」
白い寝巻を着替え髪を結びながら妹紅は輝夜に自身が抱いていた疑問をぶつけてみる。輝夜が家出をした、と言った訳ではないのだが妹紅は何となくそうじゃないか?と予想しているのだ。
「家出……ね、まぁ似たようなものか。ちょっとした家庭の事情よ」
妹紅から手渡された赤い寝巻に袖を通しながら輝夜ははぐらかす様にそう答える。正確には家庭の事情ではない、しかし詳しく説明する気はなかった――――単に面倒臭かったのかもしれない。
「家庭の事情ね〜、まぁ言いたくなければ無理に聞かないでおいてあげる。お父様達も言ってたけど暫く此処に居ればいいわ」
不比等達は輝夜に暫く屋敷に滞在するように勧めていた。輝夜は知らない事だが家柄上妹紅は友人と呼べる相手が居ない。庶民とは殆ど接点が無く同じ貴族だと友好どころか嫌悪の視線を向けられる事の方が多いのだ。
なまじ藤原家が京で有数の貴族である為に妹紅に寄って来るのは下心しかない輩が殆ど。同性であったとしても油断は出来ないのだ。
そんな中現れた輝
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