第一章
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来るだけ太らないようにしている。気にすることは多い。若い時は本当に何も気にしていなかったというのに。何か陰鬱な気持ちになろうとしていた。
「何か、こんなのばかりね」
そしてこう思った。
「あれは駄目、これならいいかも、それはやらなくちゃいけない。歳をとるとこんなのばかり」
心の中で呟く。
「学生の頃はこんなことはなかったのに」
ここで後ろから声がしてきた。
「なあ、何食う?」
学生達であろうか。少年の声だった。
「コンビニでお握りでも買うか?」
「そんなのじゃ腹がふくれないよ。もっといいの買おうぜ」
「つっても今の時間何処も開いてねえよ」
「テストが長引いたからな」
「熟の帰りかしら」
真砂子は声を聞きながらそう思った。振り返りはしない。
「ったく、何であんなに長引くんだよ。テスト一枚で」
「仕方ないだろ、模試の前の事前のテストだったんだから」
彼等は不満を交えて言っていた。
「文句を言ってもはじまらないぜ」
「ちぇっ」
「で、何食うんだよ」
また食べ物に話が戻った。
「コンビニが嫌ならファミレスでも行くか?」
「あっ、いいな」
その中の一人がそれに頷いたようである。
「じゃあカツ丼食おうぜ、カツ丼」
「カツ丼」
それを聞いた真砂子の顔色が変わった。
「こんな夜遅くにそんなカロリーの高いものを」
真砂子の考えの基準ではそうである。だが彼等は違うようである。
「ラーメンがいいんじゃないのか、パーコー麺な」
どうやらロイヤルホストに行くつもりのようだ。豚カツを乗せた麺でありこのファミリーレストランの人気メニューである。実際に学生等に好評だ。
「いいな、それも」
「何なら両方頼むか?腹減ってるし」
「まあ行ってから決めようぜ」
そんな話をしながら真砂子の横を通り過ぎていく。この時真砂子はその中の一人の顔をちらりと見た。
「あっ」
その少年の顔を見て思わず声をあげた。今まで見たこともないような整った顔立ちの少年だったからだ。
見惚れてしまった。そして呆然となる。こんなことは久し振りであった。
「何て綺麗な」
心の中で思った。そして後ろを振り返る。何処から来たのか見たいと思ったのだ。
ここはいつもの帰り道である。塾や予備校が多く並んでいる。その中の一つであるらしい。真砂子はあの少年はこの中の一つにいると思った。だが何処にいるかまではわからなかった。
「何処なんだろう」
けれどここを通るのは間違いないのだ。それだけわかっただけでもよかった。とりあえず明日もここを通る。また会えることを願うのであった。そして雨の中を歩いて行った。雨は弱まることなく降り続いている。道は相変わらず街の灯りを照らし返している。それまではその光を見ても何とも思わなかったが今は何処
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