十七章
長尾勢×松平の考え
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本音を言えば楽なのに、葵の表情はその言葉さえ弾き返す。弾き返すと言うより、何もかも飲み込み、閉じ込むような感じだ。
「もし三河に戻りたいのなら、美空に内緒して、転送してやっても構わんが。まあばれたら、しょうがないが」
「はい。その時はお世話になりましょう。・・・・では私は所用がありますればこれにて。・・・・悠季、行きますよ」
「はっ!」
俺の言葉に反応したのか、若干穏やかな感じなのは見れた。ただし、それが本心なのかは俺にも分からない。社交辞令なのかもしれないけど。そうして松平衆に指示を下すべく戻って行く葵たちと入れ替わりに、こちらに駆けてきたのは綾那と歌夜だった。
「・・・・・・っ!?」
けど、彼女たちとすれ違う位置を歩いていた葵の表情を見た二人とも。その表情を見るなり、元気の良い足音は、途端になりを潜めてしまった。
「あのぉ・・・・一真様」
「んー?」
「どうしたですか?殿さんと喧嘩したです?」
「葵様のご様子が少しおかしく思えましたが・・・・」
「意見が相違だけで、別に喧嘩をしたわけではない。安心しろ」
「でも殿さん、怖かったです・・・・」
「悪いな」
葵の様子を見慣れている二人でさえ、あの反応か。俺も気付いてはいたけど、外では納得はしているがやはり内心では不満だったのであろう。
「葵は、この国がよそ者に好き勝手されるのが、我慢ならないんだろうよ。すぐにザビエルや鬼を追い払いたいと焦っているのだろうな」
「そんなの綾那だって同じなのです!あ、でもでも一真様は違うです?」
「ふむ。そうだな。同じではあるが、俺達は越前で負けてしまった。次は必ず勝たなければならない、だからもっと戦力を集めないといけないと思っている」
「・・・・・・」
「三河衆じゃダメですか?綾那、次はもっともっと、もーっと頑張るですよ!」
「それじゃダメなのよ。綾那」
「歌夜までそんなこと言うですか・・・・」
「次に勝てなかったら、何のために一真様が戦っていたのか意味がないわよ」
「あ・・・・・」
「まあ、それについては今後だが。綾那がもっと強くなれるのはあり得るが、綾那一人で背負っても解決しない。もっと力をつけて戦う必要があると俺は思う。だから、美空の力を借りたいがそのために時間を割くことになるけどな」
「与えられた時間をどう使うか・・・・ですか。意見の相違というのは、そういう事だったんですね」
「葵の言いたい事も分かるが、今は難しいところだ」
「・・・・難しいですね。どちらの言葉にも理があります」
まあ、俺だったら神界の神を呼んで、鬼どもを駆逐するのが手っ取り早いが。あくまで人間としての考えだったら悩んで決めるしかない、
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