十六章 幕間劇
敗戦後の癒し
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今頃は、どうしたのだろう。空から見守っていたであろうか、それとも側に置いたであろうか。
「久遠様・・・・」
「あれを・・・・一真を殺したのは、我だ」
「ですが、久遠様。久遠様がそう仰って下さったからこそ、旦那様は私の恋人になってくださったのですよ」
一真が久遠の恋人になっていなかったら、一真は空から見守っていたか、旅をしながら用心棒で働いてたのかもしれないから、双葉は彼と会う事はなかっただろう。そうなれば、彼を中心にした同盟も起こらず・・・・鬼との戦いは、力を失った幕府の声に従うわずかな者達のみで、一筋の打開策もないまま始まっていたに違いない。
「・・・・・・」
「・・・旦那様は、生きておいでです。旦那様には、良い部下もおりますし、旦那様は神様ですよ。それにお姉様が守っていると信じています」
「だが・・・・」
一葉が鹿島新当流の皆伝である事も一真がどんな神なのかも知っている。けれど、どんな達人級な者であったとしても、それに神の攻撃だったとしても、あの圧倒的な鬼の軍勢を前にして・・・・。
「そして幽が、足利の名を慕う三千世界の無数の刃と神の加護によって、必ず・・・・お守りします」
「双葉はあの鬼の軍勢を見ておらぬから・・・・・ッ!」
「見ておりませぬ。ですが・・・・それでも・・・・!」
久遠の背中を触れるのは、固く絞られた小さな手拭い。それを掴む小さな手は・・・・その手拭いよりも固く握られ、震えていて。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
久遠もそれ以上の言葉もなく。双葉もその視線を受け止め、瞳をそらす事はない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
やがて。
「・・・・・・すまん」
荒ぶり、昂ぶった声は、その時の一度きり。続く久遠の言葉は、力を失った元の弱々しい声だった。
「お前も・・・・一真の恋人なのだな」
「はい」
そして、一真と共にあるであろう、一葉の妹でもあり。
「そうだな・・・・」
久遠はあの時の戦いで、多くの部下を喪った。けれど喪ったのは、久遠一人ではない。
「結奈も、壬月や麦穂も・・・・もう動いておるのだな」
「はい。そして、久遠様を心配していらっしゃいます」
「そうか。ならば我も・・・・強くあらねばな」
身体を拭き終わった久遠は、服を着直した。
「温め直して来ましょうか?」
「良い」
湯浴みを終えた久遠の前に並んでいるのは、さきほど双葉が勧めていた食事の膳である。箸を取り、茶碗を掴む手は、いつもの力強さには及ばぬものの・・・・確かな意思に支えられたもの。
「・・・うむ。美味いな」
一口で、結菜が腕を振るったものだと分かる。京の薄味ではない、久遠
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