十六章 幕間劇
敗戦後の癒し
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のね)」
誰のせいか、などとは思いたくなかった。ただ、次に会えたら盛大に文句を言ってやろうと、心に誓うことにする。
「それにしても、こんなに静かだったのね・・・・」
あの決戦の日には、織田家だけではない。足利、浅井、松平・・・・そしてそれ以外の多くの家の将たちでひしめき合っていたはずなのに。今この場に居合わせているのは、織田家のたった三人だけ。
「そうですな。最近は何かとやかましかったですからな」
「・・・・一度屋敷に戻るわ。後の事は任せて良い?」
「はっ」
「久遠様のこと、お願いします。結菜様」
「ええ。そろそろ何とかなってるとは思うけど・・・・」
織田家の宿将達と別れ、結菜は小さくその名を紡ぐ。
「・・・・まったく。何をしているのよ、一真・・・・。約束が違うじゃない・・・・」
一方屋敷では、久遠と双葉がいた。
「あの・・・・久遠様」
「・・・・・・」
「(お食事・・・・また、食べていらっしゃらない)」
部屋の主は部屋の隅で、膳を持ってきた時と変わらぬ姿で座したまま。置かれた膳も、手を付けられた様子がない。
「久遠様。結菜様が、少しでもいいからお食事をなさるようにと・・・・」
「・・・・・・・」
「鮑の煮付けと焼いた鮎、お味噌汁もあるんですよ。結菜さんが、どれも久遠様の好物だと・・・・」
「・・・・・よい」
小さく呟いた久遠の手に握られているのは、蝶の飾りの付いた一枝の簪だ。かつて一葉と共に見せてもらったそれは、堺で一真に、結菜と揃いで買ってもらった品だと聞いていた。
「ですが、久遠様・・・・」
「・・・・・・」
もうどれだけまともに食事をしていないのだろう。厳しい戦いの最中であれば食事をする間もないと聞くが、それでも数日に及ぶ事はあるまい。
「・・・・失礼します」
そして、次に久遠のもとに訪れた双葉はその手に持っていたのは、ひと抱えられた手桶だった。穏やかに湯気が立つその中には、小さな手拭いが浸されている。
「せめて、お身体くらいは綺麗に・・・・」
「・・・・・」
その問いも、久遠からの返事はない。
「身なりをきちんとしておかないと・・・・旦那様が戻られた時、笑われますよ?」
「・・・・・一真が」
「はい。上を、解いてくださいませ」
その言葉に、のろのろと上衣を脱ぎ始めた久遠に・・・・双葉は、ようやくほぅと小さな吐息を吐いてみせる。白い肌はを滑るのは、固く絞られた手拭いだ。
「久遠様・・・・」
二条館で初めて会った時、久遠はあっさりと将軍に扮した双葉の正体を見抜いていた。次に会った時は、鬼に攻められた御所を救う護り手としてだったか。そしてその直後、双葉た
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