十五章 幕間劇
月見しながらの宴
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目こぼしを」
「なるほど。その口は聖なる水で酔うか」
「これほどの佳き月を映し出した水、それも水の精霊様から注がれた水であれば、そこらの安酒よりもよほど心地よく酔えるかと存じますが」
「ならば、それを汲んできた谷川に突き落とそうかと思うたが、何やらその精霊様が見てるのでやめようぞ」
ウンディーネが一葉の事を見ていたのか、言うのをやめた一葉。さすがに剣聖将軍と言われた一葉でも、水の精霊から注がれた水を飲んでいるんだ。ありがたく思えって感じだな。
「それにしても佳き月でございますな。・・・一句挙げても宜しいか」
「許す」
「ふむ。では・・・。・・・今来むと いひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」
今来むと〜・・・素性法師が詠んだ歌。すぐ来るって言ったのに全然来ないじゃん、夜明けまで一人で待ってたのに、バカ!という意味。
「・・・・よりにもよってそれか」
「どういう意味?」
「ははは。これはですな・・・。今行きますよと言う殿方を待っていた姫君が、夜まで待ちぼうけを・・・」
「それ以上言うでない」
「おや。恋する殿方を待ちわびる公方様には・・・」
「黙れというに」
「ではお返し願いたい。歌には歌で返すのが礼儀」
「ふん。・・・・ちはやぶる 神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは。・・・これで良いか」
ちはやぶる〜・・・・在原業平朝臣の詠んだ歌。こんなの知らない!川が真っ赤になっちゃってる!すっごいの!と言う意味。
「おやおや。なんとまあ物騒な・・・」
スマホで調べると、サスペンスものだな。明らかに本来とは違う意味で使っているな、一葉の奴は。
「では一真様」
「うむ。一真も一句出せ」
「では一句。・・・心にも あらでうき世にながらへば恋しかるべき 夜半の月かな。これでどうだ」
「ふむ悲しい歌であるな。だが、今の世の中では合うものだな」
スマホで検索したらあったので、これにした。ちなみに百人一首 月で検索すると出てきたけど。この歌は三条院という者が詠ったそうだ。
「ところで、幽はなんで一葉に仕えているんだ?」
「直球で聞かれましたか。まあ決まっておりまする。お、ぜ、ぜ♪」
「おいおい。今の将軍家から一番縁遠いもんだな」
「今さりげなく酷い事言わなんだか、一真」
「気にするな。それより、それはマジか?」
世の中は金だーって言う人もいるからな。でも、幽くらいの者が、一葉にここまで仕えたりしないだろうけど。
「ははは。まあ、それは直接に過ぎまするが・・・・本当のところは、こうして将軍家に仕えておれば、それだけで箔が付きますし。自然と見聞や顔も広うなり申す。条件の良い新たな仕え
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