第六章
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第六章
「今からね」
「畏まりました」
その爺やも爺やで畏まりましたと来た。
「それでは只今より」
「さあ、乗って」
美有は爺やが扉を開けると恭輔に顔を向けて言ってきた。
「殿方が先にね」
「殿方って」
「鈍いわね」
急にポツリと声を漏らした。
「じゃあ言うわよ」
「何を?」
「だからよ。この服はね」
恭輔の方をキッと見据えてきた。
「女の子がこうした服で前に出るのって。わからないのかしら」
「えっ・・・・・・」
流石にここまで言われるとわかった。
「それじゃあまさか」
「そのまさかよ」
やっとわかったのね、と顔に書いてあった。そういうことであった。美有は今まであえて言わなかったのだ。そうすれば恭輔が全然わからなかったのだ。
「全く。何時わかるかって思っていたら」
「いや、そう言われても」
結局恭輔が鈍いだけであった。その鈍さも限度があるが。
「やっぱり」
「とにかく。行くわよ」
美有はまたしても強引に彼に言ってきた。
「一緒にね」
「龍華さんの家まで?」
「そうよ。行くわよ」
そしてまた問う。
「いいわね」
「うん」
実は異論はない。彼にしても美有は美人だと思う。それに自分を好いてくれる相手に好意を持たない人間もそうはいない。
「最初からそう言ってくれたらよかったのに」
「最初にって」
何を言っているのかと本気で思った。
「そんなこと言ってないじゃない」
「態度で言っていたわよ」
まだそんなことを言う美有であった。
「充分にね」
「わかったよ。言っていたよ」
「そういうこと」
かなり強引だったがそれでも話が収まった。何はともあれ恭輔は美有の車に乗るのであった。二人は後部座席で隣同士になった。その席もかなり豪華なものであった。
「お父様とお母様が待っておられるから」
「何でそこまで話は?」
「当然じゃない」
これは美有にとって当然のことでしかなく恭輔にとってはそうではなかったが。それでも当然のことにしてしまう美有であった。
「恋人ができたら報告するのが義務でしょ」
「そうだったんだ」
「そうなの」
やはり強引に言う。
「わかったわね、私の愛しい方」
車が動く直前ににこりと笑った。それは今までの気の強い顔ではなく素直な少女の顔だった。その顔を見て恭輔は完全に陥落した。
「う、うん」
「宜しくね」
またにこりと笑う。その笑みがずっと側にいてくれるのなら少し強引でもいいかも知れないと思う恭輔であった。
気の強い転校生 完
2007・10・7
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