入学編〈下〉
宿題の答え
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放課後のカフェを行き交る生徒たちをぼんやりと眺めながらではあった。蒼太は俺が座っているところの後ろにて立っていた。ぎこちない雰囲気が漂っているのは、新入生の利用が多いためなのか。渡辺先輩に聞いた話では、入学直後が最も学内カフェの利用率が高いと聞く。慣れていると、部室や中庭や空き教室などのたまり場を見つけて足が遠のくらしい。営利でやっている訳ではないから、客が減っても問題もないし赤字もしないだろう。テーブルに置いてあるコーヒーは既に冷めていた様子だった。先日とは逆の立場&パターンだが、相手に誘われたという点だけはあの時と同じだった。俺はあの時の「宿題」の答えを聞くために、壬生先輩を待っているのだ。周りにいる監視がいるというより視線がウザかったが、蒼太の目が光るからかすぐに視線をそらしていた。まあ監視というのは、おそらくあの人がいるんだろうなと思っていたら約束から15分でやっと現れた壬生先輩。
「ごめん!待ったでしょう?」
「大丈夫です。連絡をもらっていましたから」
別に無理をしている訳ではない。俺の端末に十分遅れるというのは、伝言として入っていた。着信があったのは待ち合わせ五分前で、既に予定を組み替えるタイミングではなかったが三十分以内なら待ったというのは入らない。まあ一時間以上だったら、遅刻に入るがな。
「そう、よかった・・・・。怒って帰ってたらどうしようかなと思っちゃった。それに護衛の人もずっと立っていたのだし」
大袈裟に胸を撫で下ろしている壬生先輩。どうやら今日も「可愛らしい女の子」モードらしい。
「どうしたの?」
「大した事ではありませんが、先輩が時々『可愛らしい女の子』になるので、剣を握っている時とのギャップを感じたのですよ」
「やだ・・・・もう、からかわないでよ」
慌て気味に、目を逸らされてしまった。彼女の素なのか、作られた仕草なのか。それについても、俺や蒼太にも判別は付かない。あとは探りを入れたが不発に終わったが。
「すみません」
笑いを含みながら、謝罪してたが今のは俺の演技でもある。
「もう・・・・織斑君って、本性はナンパ師なの?」
「魔法師ではないですね、今の所はまだですが」
冷め切ったコーヒーを飲んだら気配を感じたので、後ろを向いた俺と蒼太。壬生先輩から目を逸らしたのではなく、観葉植物の陰に見え隠れている人影へ目を向けた。
「渡辺先輩・・・・」
壬生先輩も俺と一呼吸遅れで、その人影に気付いた。彼女が呟やいた声は、渡辺先輩には届いていなかった。あまりにも小さすぎて。
「やあ一真君」
声をかけてきたのは渡辺先輩の方だった。しかしそれは明らかに、俺を見咎められたからであってか、俺が目を向けなければ渡辺先輩は知らん顔で通り過ぎていたのだろうな
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