第四章
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イゾンを救えば、戦争は必然なわけだな?」
「そうだなぁ。どう計算してもそうなるわなぁ」
ユーキ君が悩ましげに言ったが……。
それを是としている気がする。
だが、トーリ君が新しいカンニングペーパーを出した。
「では、商人、小西君からの質問です! 姫を救い、極東の主権を確立しても、戦争が起きれば死人が出るかもしれません。そのあたり、どのような考えを持っておりますか? だって、兄ちゃん、セージュン」
「トーリ。戦争をすれば戦死者が出る。だけど、戦争をしなくても戦死者がでるんだな、これが」
困ったもんだ、と言う。
……戦争を回避しても戦死者がでる?
私の疑問は、そのままトーリ君が代弁した。
「ん? 兄ちゃん、戦争を回避しても戦死者が出るのか?」
「ああ、戦争を回避しても戦死者が出るんだ」
気遣いだろうか。
葵・トーリの問いかけは、正純に取って父親たちへの反抗になるものだ。
だから、葵・ユーキが答えるのだろう。
「極東の金融にある各居留地の予算は現在全部凍結されている。それはいずれ聖連に奪われるものだ。そして、今は四月。
極東において、年度が始まったばかりで居留地の予算が手付かずに近い状態ってことだ。その手付かずの予算を聖連に大部分を差し押さえられているわけだ。
つまり、各居留地は、今、最も金がない状態になっている。それは公的な事業や、病院、防犯、上下水道そのたもろもろ。今後、公的予算の投入が全くない状態でストップするわけだ。――特に医療が問題だ。病院が動けないということは、有効な治療はできないし、薬だって手に入らない」
病気や、重症を負ったらそれでおしまいだと。
「さて、金の総量が少なくなれば、貧困が始まる。金のない居留地ではろくに生産もできない。時間が経てば経つほど貧困が進む。食うものが食えなくなり、医療が受けられなくなり、徐々に生活が保てなくなって人々は死に近づいていくわけだ。これが戦争を回避した場合の戦死者というわけだ」
「じゃあ、居留地を畳んで帰化しちまえばいいじゃん」
ユーキ君が良く出来ましたという感じで頷いた。
「それが聖連の狙いだよ。帰化の際、聖連が改教とか、言語の問題のクリアを援助して、多くの人々を迎え入れるだろう」
「帰化の人間を大量に受け入れたら大変で損じゃね?」
「いや、奴隷並に安い労働力が確保できるし、重奏領域の住み分け問題とかも強引にクリアするだろうよ。何よりも、極東の技術が手に入る」
それは――とユーキ君の言葉を正純が奪うように続けた。
「武蔵、この巨大な航空艦の技術。そう、聖譜記述にある極東神話の天鳥舟《アマツトリフネ》などを再現するがため、極東は他国に比例して航空船とその関係分野が大きく発達している。それは各国が最も欲しがっている技術だ
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