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不可能男の兄
第四章
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てきたのを確認した。

「俺、頭悪いから、助言いいよな?」
「ああ、専門的な答えを各担当から得た方が、生徒たちも納得しやすいだろう」

正純は葵・トーリの向こう側にいる生徒会や総長連合の皆を見渡した。
……恨むのは私だけのしておいて欲しい。
未だに、葵・ユーキが私に味方する明確な理由が解らない。

「三人とも、討論の準備はいい? どっちが先攻? 後攻?」

予想としては、討論で私が不利になるように仕向けてくるか、どこかのタイミングで私を諦めさせるように動くかもしれない。

「じゃ、俺先攻――!」

葵・トーリが先攻を取っていた。
……こいつ、馬鹿だ。
私の考えと同じように、周囲の皆は呆れた顔をしていた。

「え?」
「え? じゃねぇよ! だって、面倒なことは早めに済ませたいじゃん」

討論は、後攻が有利。
それを知らないのだろう。

「トーリ。討論は後攻の方が有利だぞ? それでも先攻を取るか? それとも馬鹿でしたって謝って訂正するか?」
「はぁ? 兄ちゃん、俺が馬鹿だって思うのかよ? 先攻でいいもんね! 先攻でいいんだからねっ!」
「何で女口調なんだよ……」

本気で馬鹿だ。
まともに相手するのはやめておこう。

「本気でいいの? じゃあこれ、契約関係の神、オオクニヌシ系に含まれるミサトの契約書だけど。三人がそれぞれの立場で討論することを違反したら罰則だから。いいわね?」

オリオトライに差し出された表示枠にそれぞれ手を載せる。
オリオトライは言った。

「罰則だけど、天罰喰らうのは怖いでしょ? だからね、先生が武器で殴るわね?」

長剣で切ったら即死だから、鞘で殴るという気遣いだったが、鞘はどう見ても金属製であり、オリオトライの素振りを見る限りは、

「鞘でも死ぬな」

葵・ユーキが言ったとおりである。

「じゃ、始めるか」

葵・トーリが宣言した。



「皆、元総長兼生徒会長の葵・トーリが、今回の件について提案するぜ?」

葵・トーリは腕を広げて言った。

「要は一つだ。権限の奪還も何も、ホライゾンを救って告るという壮大な計画の足がかりでしかねぇ。だから、ハッキリさせとこうぜ。ホライゾンを救いに行くことで、何が得で、何が損なのか。それをこれから、俺がこの……セージュンと兄ちゃんと討論する」

大きく彼は息を吸い込んで皆に聞こえる様に言う。

「だから、まあ、まずは、こっちの立場を明確にしておこうか、それは――」

皆が注目する中、皆に聞こえやすい音量で葵・トーリは言う。

「――やっぱホライゾン救いに行くの、やめね?」

誰もが、通神の向こう側の誰も彼も、葵・トーリの告げた言葉に対して動くことが出来ずにいたが……。


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