入学編〈下〉
事務スキル×カウンセリング
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だろ。そのための策に過ぎなかったが、俺には効果がなかったのか調子が掴めないでいた先生であった。
「それで本題に入りますと、なぜ私がここに呼ばれたのでしょうか?」
「今日は、織斑君に、私たちの業務へ協力をお願いしたくて来てもらいました」
「私たちの業務、ですか?」
知能が高いのは、入学試験の結果を見るだけでも理解はしていたのだろ。こうして的確に突いて来る応答は、ますます警戒をしてしまうくらいだ。あとは一筋縄にはいかないから、慣れない色仕掛けの真似事をしたのだろうがそれも失敗に終わった。
「ええ、私たち、カウンセリング部の業務です」
見抜かれているという直感が小野先生の意識がよぎった。でも今は「カウンセリング業務」という建前でやっているため、それ以外に取るべき道はない。
「生徒の皆さんの精神的傾向は、毎年のように変化しています。例えばですが、織斑君は上の人物に対しての一人称は『私』というふうにしてますよね。あとは『自分』という一人称を使う生徒もいますが元々、軍務志願者の割合が高い魔法科学生の間では珍しくないものでしたが、それでも、『私』や『自分』という一人称を使う生徒が一般的になったのは、三年前の沖縄防衛戦の勝利以来です。勝利というより国防軍に手を貸した組織がいたお陰で、犠牲もなく勝利したと聞いています。社会情勢の変化は、生徒のメンタリティーにも変化をもたらします。特に、大きな事件が起こった後は、同じ年代の少年少女とは思えないほど、物事や自分自身に対する考え方、考え方が変わってしまいます」
一旦言葉を切った小野先生は、俺の表情を窺っていた。俺は戸惑いもなかったが、小野先生の話をまるで過去のように聞き流していたけど。三年前の事は俺もいたし、手を貸した組織はソレスタルビーイングで俺自身も加わっていた。
「それで、毎年度、新入生の一割前後を選び出して、継続的にカウンセリングを行うために」
「なるほど。つまりモルモットみたいな感じですか。それだったら呼ばれる以前から協力はしますが、本当の目的は何ですか?」
微笑しながら、さらりと質問を返した俺。小野先生は動揺を押し隠すようにしていたけど、気で分かるんだよなー。
「・・・・本当の目的を隠しているって考えているの?心外だな。私、そんな性悪女じゃないわよ?」
あくまで軽く、冗談めかした口調は、相手を懐柔するためというより平静を失くした自分の心を悟られないためだった。
「サンプルにするには些か特殊すぎると、私は思いますが。それに外には護衛者がいますし、強い権限を持っていることは先生も存じ上げているはずですが?」
「私も織斑君が一般的な新入生とは思っていないわ。織斑家の事はある程度知っているのよ?後ろ盾である蒼い翼とか、あとは一科生と二科生の
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