第二章
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第二章
「俺は別にそうは思わないけれど」
「御前マジかよ」
「美人でお嬢様なのに」
「いや、それは関係ないんじゃないかな」
二人に言われてもそれは変わらなかった。
「だってさ、好みじゃない」
「好みかよ」
「俺はそういうのは気にしないんだよね。そりゃ美人は好きだけれど」
これは彼とて同じであった。美人が好きでない男は一種類しかいない。同性愛者だけであるが生憎彼はそうではないのである。
「お嬢様でも」
「あの娘嫌いか?」
「だから美人だとは思うよ」
それはあらためて言う。
「けれどね。それでも」
「好みじゃないのかよ」
「変わってるね」
「いや、だからさ」
そういわれて少しムッとした感じになってまた言い返す。
「そうじゃなくて。あまりこう」
「気が向かないってわけだな」
「クラスメイトだとは思うけれどね」
そういうことであった。彼は本当にそれで留まっていた。それ以上もそれ以外も何も思うところはなかったのだ。この感情は変わらないだろうと彼も思っていた。
「まあ俺もアタックはできないしな」
「僕も」
昭文だけでなく信も言う。彼も彼女がいるのだ。
「御前はフリーだからいいと思うんだけれどな」
「それでもさ。クラスメイトってだけしか思わないし」
「じゃあまあそうしな」
「うんうん」
二人は恭輔の素っ気無い様子に拍子抜けしながらもそう返した。話はこれで終わったのだがそれを聞いている人間がいた。教室の扉のところでこっそりと聞いていたのである。
「そう。それじゃあ」
その日とはそこまで聞くと一旦すっとその場を後にした。何かを考える顔をしながら。
その日の放課後。恭輔が帰ろうとすると不意に呼び止める人がいた。
「ちょっといいかしら」
「あれっ」
それは美有であった。その整っているが冷たく厳しい感じの顔で恭輔の机の前に来たのであった。立ち上がろうとしている姿勢の彼の前で傲然とした感じで立っていた。
「龍華さん?」
「学校を案内して欲しいのだけれど」
「あれっ、それって」
それを聞いて思った。
「確か昨日」
「昨日は昨日よ」
美有は反論を許さない口調でこう返してきた。
「今日もう一回見学したくて」
「もう一回?」
「そうよ。いいかしら」
「別にいいけれど」
恭輔は美有を見上げて答えた。
「じゃあ皆と一緒にね」
「それは必要ないわ」
皆に声をかけようとする恭輔を制止するのであった。
「皆には昨日してもらったし」
「じゃあ。止めておくんだね」
「そうよ。今日は貴方に御願いしたいの」
また恭輔に言う。
「わかったわね」
「わかったよ。それじゃあ」
彼は何も思うことなく美有の言葉に頷いた。
「行く?じゃあ」
「ええ。御願いね」
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