第29話 フェザーン到着
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まらないからな」
二度ばかり拍手するとブロンズ准将はウンウンと頷く。これもテストだったのかと思うと、小心者の俺の胃が小さく悲鳴を上げる。
軍民関係なくあらゆる情報を集め、分析し、場合によっては工作し、戦争遂行の一翼を担う情報部は真に魔窟というべき場所だ。統合作戦本部ビル地下七七階という異様な位置もそれを際だたせる。艦隊も有効な情報がなければその威力を発揮できない。だが時に政府の意向を重視し、機関を運用して世論を掻き惑わしたり、野党の指導者などへの妨害工作を行ったり……と好ましくない任務もあるらしい。あくまでも『噂』であるが。
「フェザーンは建前でも『帝国の一自治領』にすぎない。だから同盟は『弁務官』を置く。『大使』では国交関係があると帝国に誤解されるからな。帝国がその暴虐ぶりを発揮すれば、フェザーンなど卵の殻を踏みつぶすより簡単に崩壊する……と思うだろう」
ブロンズ准将の言うとおり、一〇数年後には金髪の孺子がボルテックと結託(あるいは利用)し、帝国軍を大挙としてフェザーン回廊へ投入。自治領を軍事占領している。その危険性をこの時代でも情報部は理解しているにもかかわらず、何故神々の黄昏の時に同盟政府の動きが鈍かったのだろうか。疑問は尽きないが、ブロンズ准将は話を続ける。
「フェザーン自治領に帝国が軍事侵攻しない理由は幾つかあるが、一番の理由は帝国貴族内部の対立だな。貴族は多かれ少なかれフェザーンと金銭面で結びついている。帝国政府も国債を買ってもらっている。フェザーンに不利益な行動を起こそうとすれば、それに対抗する貴族を示唆して妨害させる。弱者の戦術、というべきだな」
もちろん同盟軍もフェザーン侵攻作戦を企図したことは何度もある。だが国防委員会の予算承認が通過したことは一度もない。政治家の内情すら時に捜査する情報部だが、この件に関してだけは時の統合作戦本部から指示があっても、適当にお茶を濁している。なぜか?
「外交というのを帝国も同盟も忘れて久しい。特に砲火のない戦争を戦争と呼ばない節が両国には見られる。フェザーンはそれをよく知っている。表も裏も。だから情報部としてはフェザーンの存在を棄損するのは認められない。帝国の情報を安易に得られるチャンネルの損失は同盟にとって死活問題に近い」
「フェザーンが帝国・同盟双方に情報と経済力を駆使し、歴史を動かしている、と考えてよろしいのでしょうか?」
原作でもフェザーンの為政当局の苦心については詳しく書かれている。俺はジャブのつもりでそう言ってみたが、ブロンズ准将の驚きようといったらなかった。
「歴史、という言葉は私には思いつかなかったが、彼らの生存戦略は君の言うとおりだ。そして我が同盟は帝国よりも国力が劣るが故に、その戦略に乗らざるを得ないのが実情なんだ」
だから帝国の情報
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