第八章
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第八章
「それだけか?」
「顔だけか?」
「性格だってな」
顔だけを見ているのではなかった。
「素直だし真面目だし」
「いい娘だっていうのか」
「つまりは」
「気も利くし優しいし面倒見もいいだろ」
ほぼ完全に褒めちぎりである。しかし本人に自覚はない。
「だからな」
「いいっていうのか」
「それで」
「しかも小柄でスタイルもいいしな」
「小柄なのはわかるけれどな」
皆それはいいとした。理佐の背は一五〇程度しかない。小柄という他ない。
「けれど胸ないよな」
「それでスタイルいいか?」
「何か違わないか?」
「そうだよな」
「脚だって奇麗だしな。全体的に均整が取れてるしな」
これは真彦の好みだった。彼は貧乳派なのだ。
「だからな」
「いいのか」
「スタイルもか」
「とにかく全部がいい」
完全に全肯定だった。
「悪いところなんてないだろ」
「だから好きか」
「それでか」
「言うぜ。俺はあいつしか見ない」
断言だった。
「あいつ意外の誰も見ないからな」
「そこまで言うか」
「極端だな」
「極端でも何でも事実だ」
断言するその言葉の調子は変わらない。むしろ語尾が強くなってさえいた。最早誰も聞いていないのに自分から言っている状況だった。
「それはな」
「それじゃあ誰よりも好きか」
「何よりも」
「一生好きだ」
これまた強い断言だった。
「あいつがな」
「よし、わかった」
「聞いたよな」
「ええ」
ここで、だった。男連中の言葉に応えてだ。屋上の階段の裏手から声がしてきた。何とその声は女のものに他ならなかった。
「確かにね」
「理佐も聞いたわよ」
「間違いなくね」
「何っ!?」
理佐の名前を聞いてだ。真彦はその顔に驚愕の色を浮かべた。
「岡村、いるのか!?」
「はい、ここにね」
「いるわよ」
女連中がその階段の裏手から出て来る。しかもそこには確かに理佐もいた。
「理佐聞いたから」
「確かにね」
「どういうことなんだ」
真彦は今の状況に唖然としていた。そのうえでの言葉だ。
「何でここに」
「ああ、悪いがな」
「御前のその考えをな」
「理佐に聞いてもらいたかったのよ」
男連中も女連中も言うのだった。
「岡村のことどう思ってるのかな」
「理佐本人にね」
「それでなのよ」
「おい、騙したのかよ」
真彦は少し落ち着きを取り戻してだ。怒った顔になって彼等に問うた。
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