魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方2
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目を外させてもらおうか」
宣言と同時――俺に残された僅かな人間性が……今までどうにか保ってきた人間性が、どす黒い衝動に飲み込まれる。もう一度戻ってこれるかどうか――そんな不安を覚える暇もないほどに容赦なく、欠片も残すことなく。
5
一夜明けて。私は光の隠れ家から朝霧の匂いが残る街を見ていた。
といっても、別に見とれるような景色ではない。似たような作りの灰色のビルが白い靄の中に立ち並んでいる。色彩の多くを灰色が占めた、ただそれだけの景色だった。この辺りの街並みを考えれば、ごく平凡なものだ。それでも、私はそれを眺めていた。この平凡な光景を守るために私達は――光やリンディ、それに私やユーノ、リブロムは必死になっている。だから、きっとこの景色には意味があるのだろう。
「具体的にこれからどうしますか?」
再びフェレットの姿になったユーノが言った。
『そうだなぁ。時間制限さえなけりゃ、ただぶらぶらしてるだけで充分なんだが……』
ここからそれほど広い範囲を見渡せる訳ではないけれど――朝早くという事で、ほとんど人影はない。それに、今日は土曜日という事もあって、私が学校に行かずぶらぶらしていても目立つ事もないだろう。もっとも、喋るフェレットと本を連れているのだ。結局のところ誰かに見られる訳にはいかないのだけれど。
『だが、実際のところそうも言ってらんねえ。相棒が探せない状態になってる可能性もあるからな』
「探せない可能性って?」
光が酷い怪我をしているのが分かっているだからこそ、不吉な気配に声が震えた。
『別に死んでるって訳じゃねえよ。この前見たろ? あんな感じにハイになってるかも知れねえって事だ』
思わず体温が下がる。この前見た光景――魔物が目覚めたあの姿。確かに光の姿をしているのに、まるで別人だった。
「で、でも! あんな事になったら大騒ぎに……ッ!」
『心配はいらねえよ。相棒だってただの馬鹿じゃねえ。対処法の一つくらい考えてあるだろうさ。でなけりゃ今頃とっくに死体の山ができてる』
ま、その対策もいつまで有効なもんかは分からねえが――リブロムが小さく呟いた。
「やっぱり、ジュエルシードを囮にしますか?」
『さて……。今の時点では何とも言えねえな。管理局とあの嬢ちゃんの母親とやらがどう動くか……どれだけ動けるのかが分からねえ。相棒も禁術の代償を負ってるから、両方の勢力から同時に襲われればさすがにしんどいだろうしな』
禁術。確かあの異様な魔法の事だったはずだ。代償というのは、あの火傷の事か。
「えっと禁術……? あの魔法は何なの?」
ついに聞きそびれてしまった疑問を今さらになって口にする。
世界を黒く染め上げたあの魔力からして、私が使うものと全く違う。光自身までもを傷つけた、とても怖い魔法だった。
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