魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方2
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伏せた――火傷の原因ともなったあの異様な魔法。そう何度も使えるとは思えないが、仮にあれと同程度の魔法が他にもあった場合、今の状態ではさすがに分が悪い。
(それなら、まずは魔力を補うべきね)
方法はある。あれはすでに回収してある。つまり、私の手元にも八つのジュエルシードがある。まずはそれを完全に掌握すべきだ。どの道私の願いを叶える為には必要となる事なのだから。探索魔法を停止し、ジュエルシードの回収に向かう。
そして、
(さすがは自らを生み出した世界を滅ぼした魔石、悪くないわね……)
掌握したジュエルシードの具合を確かめ、小さく笑う。思わぬ邪魔が入ったが――あの雌犬も、試し撃ちの的としては悪くなかった。あとは、私自身の魔力の回復が終わればあの魔導師といえど敵ではない。あと二日。それで私の願いが叶う。叶えてみせる。
(いえ……。そうね、その通りよ)
冷静になって考えてもみれば、わざわざ私自身が出向く必要などどこにもない。あの魔導師はあれに酷く執着していた。それなら、くれてやってもいい。どうせ、何の役にも立たないガラクタなのだから。
「本当に役に立たないわね。いえ、そうでもないかしら?」
あれの所在を把握する。不格好に治療を終え、海水まみれの身体を処理しているところらしい。都合のいい状況だと言えた。たまには気の利いた事をする。
「道具は使いこなす。それが作り手の責任よね」
自分に言い聞かせるように呟く。あの怪物を相手に、出し惜しみをしている余裕はない。鞭で動かないなら、別の方法を試すまでだ。
4
目が覚めた時。
私の傍には誰もいなかった。アルフも光もいない。ただ焼け爛れた■■がそこに転がっていた。その事実こそが、何よりも身体の芯から力を奪っていく。痛みや疲労以前に、もはや立ち上がるだけの気力がない。それを自覚せずに居られなかった。
『もう、いい加減に気付いているはずだ。いつまで目をそむけ続ける?』
彼女の――『夢』で出会った、ニミュエの声がした。それは幻聴だったはずだ。だというのに、あまりにもその声ははっきりと聞こえてきた。
「私が……何に目をそむけているっていうの?」
その声に、挑むように言い返す。だが、その声は明らかに震えていた。精いっぱいの虚勢すら張れていない。ああ――そんな事は言われなくたって、もう……。
「シャワー……浴びてこよう」
私を……フェイト・テスタロッサを致命的に破壊するであろうその一言を思い浮かべる直前、強引に身体を引き起こす。
『何で私を生んだんだ!?』
シャワールームに向かう途中。勝手に蘇ってくるのはあの『夢』だった。ニミュエの叫び。それが――彼女の悲鳴の意味が不思議と理解できた。例え言葉にはできなくとも。
≪不思議と、ではないだろう?≫
ニミュエの囁きが
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