魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方2
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運に感謝し、大人しく甘受すべきだろう。
(精々今のうちに体勢を立て直させてもらうさ)
しかし、この状況で躊躇う魔法使いも珍しい。そんな事を思いながら、歩き出す。こんなところで管理局にでも捕捉されたら、それこそ目も当てられない。折角の好機だ。死人はもう少し死んだ事にしておくべきだろう。
3
第九七管理外世界に残されたジュエルシードは残り八つ。五つものジュエルシードがただ腐らせておくしか能のない管理局の手に落ちたというのは忌々しいが――あの連中もしばらくは身動きが取れないはず。一方、残り八つが沈む位置というのは、おおよそ見当がついている。入手は簡単である。――簡単なはずだった。
(何故反応がないの?)
あの男――見慣れぬ魔法を使う黒衣の魔導師が沈んだ周辺を捜索するが、ただの一つの反応もない。管理局に先手を打たれたという事もあるまい。さすがに巡行艦を沈めるには至らなかったが、しばらくはろくに身動きがとれまい。そして、あの執務官に暴走のリスクを冒してまで強制発動させるだけの度量があるとは思えなかった。
(思った以上に消耗している?)
今の身体で次元跳躍攻撃を敢行するのはかなりの賭けだった。実際に体力も魔力も恐ろしく消費してしまっている。探索魔法の維持もそろそろ困難だ。自覚している以上に、精度が低下している。その可能性を考慮に入れて――入れたうえでさらに広域に探索をかける。そして、見つけた。
(ありえない……)
自らの魔力が映し出したその光景を信じる事はとてもできなかった。深刻に精度が低下している。その方がまだ納得がいく。
「何故生きているの……ッ!?」
映し出されたのは、あの黒衣の魔導師が海面から這い上がる姿だった。別人だと、最初はそう思い込もうとした。だが、あの深刻な火傷。何よりも自らの魔法が刻んだ傷。それらが別人ではないと明確に告げていた。
(生きていられるはずがない!)
海面に叩き付けられた衝撃だけで充分すぎる致命傷を負ったはず。いくら魔導師といえども生きていられるはずがない。……ただの人間であるならば。
『当てが外れたか?』
焼け爛れ、血まみれの顔で。その怪物はにやりと笑って見せた。
(気づかれた……ッ!)
背筋を冷たい何かが駆け抜けていく。それが恐怖であると理解したのは、随分と後になってからの事だった。何故なら、それどころではなかったのだから。
『こいつが欲しいなら、取りに来いよ。もっとも、渡すとしてもあの子達と交換だがな』
示されたのは八つのジュエルシード。この怪物の手にあると言うのは、管理局の手に落ちるより始末に負えない状況だと言える。
(どうする……ッ?)
今なら始末するのは容易い。そのはずだ――が、この魔導師ほどでないにしても、私も消耗している。六つのジュエルシードをねじ
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