暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
波の狭間で
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衣装換えされたのである。

とりあえず、ユウキと同じようなドレスに変えさせられなかっただけでも良しとしようかしら、などと適当に考えながら、レンはグラスを傾ける。発泡性(スパークリング)ワインが口の中で弾け、ノドを滑っていく。

「でもさ、これのどこが有用な情報なんだろ。ただパーティーを楽しめとかってクエなのかな?」

「まさかぁ〜」

そんな自堕落になりそうなクエストがどこにあるというのだ。

だが、今のところ何も起こっていないというのもまた事実だ。参加しているプレイヤーも現在まで見かけていないというのもまた引っかかるものがある。

う〜ん、と唸る二人をよそに、突如として船底部分からゴン!という鈍い音が上がった。

「……?なに、今の――――」

「シッ!静かに」

欄干に背を預けていたユウキは振り返ろうとするが、それよりも早く口元に当てられた人差し指がそれを柔らかく制した。

ここに来て、近頃ALOにて《虚数存在(ヴァンフォーレ)》などと言われるようになった少女は、《終焉存在(マルディアグラ)》と呼ばれる少年の中のナニカが明確に切り替わったのを如実に感じた。

根拠は、眼。

今の今まで、暇そうでダルそうに濁っていた瞳が、今はギラギラと剣呑な光を放っている。口角も引き裂かれるように持ち上がり、笑いの形を形作っている。それは決して、人を安心させるようなものではない。どちらかと言えば、放っておいたら絶対に大丈夫じゃないよなー的なアブナイ笑顔である。

少年は少女をひとまず黙らしてから、自分の口元に人差し指を当てて『静かに』というジェスチャーをしながら、もう一方の手でゆっくりとバルコニーの下方を指す。

とりあえず、料理を作ってくれたNPCコックに胸中で詫びながら小皿を床に置き、ドレスの裾を若干気にしながらユウキは欄干の間からにょっきり顔を出した。

しかし、真っ黒な海面には、レンのテンションを豹変させるような何かは特に見当たらない。ただただ、黒いうねりが存在するだけだ。ハテナマークとともに首を傾げる少女だったが、その懸念も《索敵》スキルの補助を借り、視界が暗視モードに変わるまでの事であった。

いる。

ある。

黒々とした海面。それを切り裂く船底。そこに張り付くように、海面と全くの同色の黒い小型船が鎮座していた。そこのハッチからは、どこに詰め込んでいたんだと呆れるほどの黒尽くめがわらわらと溢れ出し、どこかの怪盗が持ってそうなフック付きロープを用いて舟の側面をよじ登ってこようとしていた。

今いるパーティー会場用に用意された大広間が、全十階層からなる《セントライア》の第八階層に位置する。推測するに、あの連中はどうやら第一階層から侵入し、そこを基点として舟全体を乗っ取る気なのだろう。

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