暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
42.記憶の邂逅
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な女性が入ってくる。
 彩斗のクラスの担任の教師である松野順子(まつのじゅんこ)こと、通称、松っさんの御成だ。
 松っさんの声にそれぞれのグループで話していた生徒たちが席につく。

「めんどいから挨拶抜きでST始めるぞ」

 松っさんはかなりのめんどくさがりやであった。そのことから彩斗は彼女にかなりの好印象なのだ。

「まぁ、少しは耳に入っていると思うが、今日このクラスに転校生が来る」

 松っさんの言葉に生徒たちがざわつく。各々でどんな転校生が来るかなどの意見を飛び交わせる。
 可愛い女の子なのか、かっこいい男の子なのかなどのことを言っているが彩斗には関係のないことだ。同じクラスになるという点では関係のないことではないが、現時点ではただの他人なのだから。

「ホラ、静かにしろ」

 クラス名簿を教卓に叩き、大きな音を立てて生徒たちを静かにするように促す。
 数人の生徒はまだ喋り続けてはいるが松っさんは話を続ける。

「ちんたら説明するのも面倒だからとりあえず入ってもらうか」

 彼女は先ほど入ってきた扉に合図をする。正確にいえば扉の外へだ。

「それじゃあ、入ってこい」

 手招きの合図で前の扉から人影が入ってくる。
 寝ぼけた彩斗の眼がその人影に徐々にだがピントを合わせていく。紺色のブレザーの首元に小さな赤いリボン、無地のグレーのスカート。彩斗が通う宮代中学校の制服を着た少女だ。可愛らしい顔立ちで、髪を横でしばっている。
 中学生にしては大人びた顔立ち。それと彼女がまとっていた物寂しげ気配と暗い目に奇妙さを感じていた。
 少女は教卓の隣で止まる。
 その少女が可愛らしかったことか、大人びた顔立ちのせいか、生徒たちは男女問わず再び口を開いた。

「ホラホラ、静かにしろ!」

 松っさんが再び、クラス名簿を教卓に叩きつけ、生徒たちを静かにさせる。

「自己紹介を頼むよ」

「……わかりました」

 静かだが綺麗な声の響きが空気を震わせる。その声に聞き惚れたのか一瞬、生徒たちが静かになる。
 それは彩斗も例外ではなかった。

「今日からみなさんと一緒に勉強することになりました、未鳥柚木(みとりゆずき)です。今後ともよろしくお願いします」

 この瞬間からあの事件へと歯車が動き出した。一度動き出した歯車はなにかを失わなければ止めることはできない。
 それはなにかを得るためには、なにかを失わなければならないことと同じことだ。
 だが、このときの彩斗は歯車が動き出したことなど知るよしなどなかった。

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