第三十一話 紺の狙撃手
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体の向きを変えたその時、コンテナから聞こえた音。
勢いよく振り返ったエックスの瞳が、驚愕に染まった。
コンテナの割れ目にかけた手で広げた隙間から、そのレプリロイドが出てくる。
屈強な足でコンテナの破片を踏み付けたレプリロイドは、這い出るために折っていた腰を伸ばした。
その巨体を見上げ、エックスは声をなくす。
見間違えるはずもない、その顔。
ゆっくりと近付いてくるレプリロイドを見ていたエックスは、驚愕のあまりにバスターを構えることさえできなかった。
最初に出てきたレプリロイドも、それに付いて出てきたレプリロイドも、その次も。
コンテナから出てきた全てのレプリロイドが。
エックス「シ……シグマ……!!?」
史上最悪のイレギュラー、宿命の敵。
滅んだはずの、シグマ、だった。
何体ものシグマが、炎を背に不気味に揺らめいている。
その倍の数の目がギラギラと輝く。
立ち尽くしてしまうエックスの正面で、不意にシグマたちが動いた。
シグマ達の中心にいたのは、シグマではないレプリロイド。
現れたその姿に判断力を取り戻したエックスは、切り換えたままだったバスターを構えようと左手を引く。
瞬間、語りかけてきた涼やかな声は、エックスの動きを止めるに充分だった。
ルミネ「事故から身を守るために……」
声に違わず、紫の髪のレプリロイドが上げたその顔は美麗と言わずにいられないもの。
顔と共に上げられた瞳。
その優雅な動作の流れのまま、金色の瞳がエックスを見据える。
ルミネ「頑丈なシグマボディをコピーしていたのです」
静かでありながら天を貫くような声は、神秘ささえ漂う。
薄い笑みを携えて、紫の髪のレプリロイドは続けた。
ルミネ「私達、新世代型レプリロイドには完全な耐ウイルス性能がありますから……」
声に導かれるように、エックスと向かい合うように並んだシグマたちが光を放った。
思わず身構えるエックスの目の前で瞬時に縮む身体。
元に戻ったのだと理解するまでに時間はかからなかった。
ルミネ「シグマボディをコピーしても、何の問題もありません」
新世代型レプリロイドが持つ、コピー能力。
自分と同程度の大きさのレプリロイドでなければ姿のコピーは出来ないアクセルとは違い、ルナのコピー能力よりも完成度が高いそれ。
目の当たりにするのは初めてだった。
エックスはバスターを解除し、構えと警戒を解く。
白と紫を基調とした出で立ちのレプリロイドに、ほとんど無意識で問いかけていた。
エックス「君は……?」
薄い笑みを絶やすことのない唇が、ゆっくりと開く。
ルミネ「私は、ルミネ」
金色の瞳が、真っ直ぐにエックスを見つめた。
ルミネ「この軌道エレベーター、ヤコブの管理者です」
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