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不可能男の兄
第二章
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正直、弟が同性愛に目覚めたかと思ったが、アイツの本能は正しかったか……」
「あ、おい――」

葵と、声を続けようとしたが目の前の葵・ユーキはブツブツと口の中で言葉を噛んでおり、こちらの声が聞こえていない状態だ。
それに、私が女だと葵・ユーキは今朝まで知らなかった。
葵・ユーキの目の前にいる私は男装した女子だと知った彼は、今の今まで以前と変わらずであったが、私にその事実を伝えたことにより何か彼の中で変わるかもしれない。

「うん、よし。正純、ちょっとこれから俺の家に来いよ」

葵・ユーキのなかで考えがまとまったらしい。
なんだか、良い事を思いついたという顔をしている。

「何故だ?」
「馬鹿だな。お前が本当に女の子かどうか確かめるために決まって――」

ガンッ、と金属製の音が店内に響いた。

「トーリも馬鹿だけど、アンタも大概馬鹿だね」

鍋で葵・ユーキの頭をぶっ叩いた、女店主がそこにいた。

「正純さん。コイツ、時たまトーリみたいに馬鹿になるから気をつけた方がいいよ」
「は、はあ……」

葵・ユーキが馬鹿になった。
どうやら血は争えないらしい。
彼の考えでは、私を部屋に連れ込んで……その、有るか無いかを本気で確かめようとしたらしい。
そして、彼は頭をさすりながら言った。

「俺は実際に見たものしか信じない」

それに、目で見て確かめたほうが効率が良いとまで言った。
何をどう考えたかは知らないし、知りたいとも思わないが勘弁して欲しい。

「まあ、なんだ。正純の歩き方とか、女子達の接し方からしておそらくそうじゃないかと思ってはいたが、確信が持てなくてな」
「おい。何だその含みのある笑顔は!」

実は前から知ってましたと言わんばかりの笑顔が葵・ユーキの顔に張り付いていた。

「正純。お前、女か?」
「ああ……」

中途半端だが、と伝えようとしたが、葵・ユーキの双眸《そうぼう》が私を口を黙らせる。

「子供は?」

その問の中には、子供が産めるかどうかが含まれていた。

「そこまでは手術してないから産めるはずだ……」

回答に、胸のことやら、こんな身体で結婚できるかどうかは置いておいて答えた。
彼の真剣な眼差しと私の視線が交じり合う。

「そうか。誰も貰ってくれないとか思うなよ? 誰も貰い手がいないなら俺が貰ってやるから。まあ、正純にも選ぶ権利があるがな……」
「っぅん……」

さて、何の話だったか。
私が女で、子供が産めるかどうかの問答だったはずが、いつの間にか婚約の約束を取り付けられてしまった。
下腹部に熱を感じるし、それが顔の方に来ているのもわかっている。
今の私は文字通り、女の顔をしているのかもしれない。



「ところで、今気付い
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