≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その肆
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攻略にほとんど関係のない会話でだらだら時間つぶしにしていると、パンパンと手を叩く音とともによく通る美声が噴水広場に響いた。
「はーい! それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんな、もうちょっと前に……そこ、あと三歩こっち来ようか!」
堂々とした、高校の生徒会長のような喋り主は長身の金属防具を装備した片手剣使いだった。彼のゲーマーにあるまじき整った顔の両側にはウェーブして流れる鮮やかな淡い青色に染められている。インディゴのような濃い青ではなくどちらかといえば薄い青、澄んだ日のうららかな青空のような色だ。
「あ、あの人髪染めの人よ。ディアベルっていう人」
「え? マジ?」
その後の名乗りで彼が本当にディアベルという名前なのと職業は≪ナイト≫なのが判明した。まさか俺以外にも職業を名乗る人がいたとは驚きだ。少し嬉しい。
というか、そんなことよりも。俺は気になったことを隣の席に尋ねた。
「髪染めてんじゃん」
「そうね。きっと余ってたから渡したんじゃないかしら?」
「なんだ、気前がいいって訳でもなかったんだ。しかもカイトシールド持ってるな。あれ君のと同じ奴だ」
横目で隣を見ると、インディゴは僅かに顎を上げて視線を上空へ向けた。そういえば視線を上げる行為は何かを考えるポーズだ、と昔読んだ心理学の本に書いてあった気がする。
「あー。私がカイトシールド手に入れたときのパーティーにいたのよね、彼。多分そのあと取ったんでしょうね」
MMOで価値のある情報というのは直ぐに伝播する。もしかしたら明日にでも此処に居る片手剣士は全員が青髪の片手剣士達と同じカイトシールドを持つんじゃないんだろうか。
その後、ディアベルの話を聞いていて拾い取れた価値のある情報はひとつだけだった。ボス部屋がある最上階への階段を発見した、という情報だけ。
しかし、ディアベルの言葉が与えたのは些細な情報だけではない。ディアベルの言葉にはできる限りの装飾がしてあり、この場にいるすべてのプレイヤーを奮い立たせる効果を持っていた。俺もまた彼の言葉に少なからず感動していた。
然るべき反応のひとつとして賞賛の拍手をしようと思ったそのとき―――
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
サボテン頭の低い声が響いた。
サボテン頭ことキバオウは、長々と、こちらもありったけの装飾をして憎憎しげに言葉を重ねる。それを短く要約するとなんと『元βテスターが情報吐かなかったから二千人死んだ。賠償しろ』との事だ。
正直、失笑を隠せない。
βテストの情報、というならアルゴの攻略本がある。≪筆記スキル≫を上げている訳ではないので詳しくはわからないが製作時間も考慮すると相当は早い。確かアルゴが事前に告知してい
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