≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その肆
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口に出して思い出す。そういえば確かに、インディゴの言葉の最後に『リーダー』という単語があった。
顔を動かさずに視線だけで周囲を見回すが、リーダーらしきプレイヤーは未だ何処にも見当たらない。時刻は既に集合時間なのだが。
「まぁでも、リーダーは大丈夫だろう。なんせ命のかかるゲームで立候補するぐらいだからな。相当の自信があるに違いない」
「どうかしらね。もしかしたらただの目立ちたがり屋かもよ?」
「うーん……。例えばあそこのサボテン頭みたいな?」
俺は集団の前方にいるとりわけ奇妙な髪型の男を指差した。その髪型はまるで、サボテンというかモーニングスターというか。兎に角、珍妙な髪型だ。背は低いものの体格はいい。
「えっ? ……うわっすっごいキャラ居るわね。現実でもあんな髪型なのかしら? なんだかものすっごい嫌な予感がするわ」
「いやいや待て待て、髪といえば君だってそうだろ? 君の髪だって藍色じゃないか。確かにあのサボテン頭のほうが相当スゴイが君の髪の色はどうなんだ?」
「現実は流石に黒よ。これは髪染めアイテムを貰ったの。『自分は使う気はないしお洒落するなら女性だろう』みたいな感じに言われて」
「ふーん。そりゃ随分気前がいい。こういう時でも女性であることは利点なんだな。羨ましい」
俺はしょうもない嘘が吐けない性質なので声から自然と抑揚が奪われる。俺は女性に憧憬も偏見も抱いたことはない。
しかしそれは俺だけではなく藍色のソードマンもそうだったらしい。ただ彼女は俺以上の男女平等主義者だった。
「でも私はそういうの好きじゃなくて。元々このゲームのアバターは男だったのよね。戦いやすいし、友達もできやすいし」
「ええ? マジかぁ。そこまでしたってのに災難だったな。ま、俺は男女差別とかしないジェントルマンだから安心しな」
「≪ジャェントルマン≫ねぇ……。スバルだったら≪ピエロ≫のほうが納得できるんだけど」
「……まぁピエロでもジェントルマンでも男女差別しないのは同じだから……」
インディゴにピエロという単語を一言でも言った記憶はない。つまりインディゴにとって俺は本当に≪ピエロ≫という言葉が似合うらしい。嫌なシンクロシニティだ。
「それにその人は男女差別っていうよりも女性贔屓って感じだったわ。でもそれは男性から見たら不公平なのかもね。弱者の変わった男女差別?」
「べつに公平であることが素晴らしいことじゃないだろ? 俺達は資本主義者でMMOプレイヤーだぜ? むしろ公平は敵さ」
「……違いないわ。そうね。そういう考え方はいいわね。救われるわ。そういう考え方が浸透してくれたらもっといいのに」
「そうとも。だから俺が今回のボス攻略戦でレアドロップしても怨み妬みはなしで頼むよ。自慢はするけどよ」
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