暁 〜小説投稿サイト〜
不可能男の兄
第一章
[7/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、ってもういない?!」
「ユーキさん何気に足速いですからねー」
「まあ、アレもトーリの仕込みだろうさね。さっさと図書室入ろうか……」

女の子の格好してましたけど、誰も言わないので無視していいんですよね。
ユーキ君が女装するとは、アデーレ達も考えたくないんでしょう。
ええ、そこにいるはずのない喜美がいたと一瞬驚きましたけど、鈴さんのおかげですね。



校舎内から爆発にしか聞こえない音が響いている。
……浅間や、ナイトが暴れてやがるなあ。
シロジロあたりが、また頭を悩ますだろう。また身内の恥で金が掛かるとか思ってるんだろうが、まあ何だかんだ言って対処してくれるはずだ。

そろそろ潮時だろう。

「一体何の騒ぎだこれはあ!」

窓の外、教導院の外枠に観客が見える。
それに、武蔵王であるヨシナオが現れたのだ。
怒られて終わるか、逃げた後怒られて終わるか。
どちらにしても怒られるが、なんとかなるだろう。
これは告白前夜祭。
明日からは、色々と変化があるだろうが、やっぱりいつもどおりになるはずだ。

「あー、あ、ヨシナオ王が鈴を泣かしたか……。トーリも気付いて何か叫んでるし、そろそろ幽霊探しはおしまいだな」

しかし、不意に鈴がその泣き声を止めた。
誰もがえ? と鈴に視線を向ける。
鈴が開いていた口を緩やかに閉じた。

「何だ?」

鈴が両の耳に手を当てている。
何かを聞いている?

「おい、麻呂どけよ! あと、伏せろ! ベルさんの邪魔だ!」

トーリの指示に、ヨシナオは戸惑ったが、しかし皆と同様に身を低くした。

「トーリめ、ポイント稼ぎか?」

いや、鈴の耳に絶対の信頼を預けているトーリが彼女の行動を邪魔しないようにしただけだ。
鈴は頬の涙を拭いもせず、左右に耳を傾けた。
そして、

「あっちか……」

開けた窓から左舷方向を見る。
そちらは東側で、そこにあるのは各務原の山渓だ。
夜の今、あるのは漆黒の底無い空間だ。
山渓の向こう、南側には三河の町があるはずだが、武蔵からは山が陰になって町の光を見ることは出来無い。
だが、不意に闇が壊れた。
暗がりの中、照らす光が生まれた。
発火の光。炎だ。
各務原の山、峰の上に、焔の形が一つ生まれたのだ。
遅れて、遠雷に似た音が聞こえてきた。
それは、

「爆発音……。しかも、デカイぞ?!」

事故か、事件か。
それとも――。



幽霊探し解散前に、本物の幽霊が出たことによって、大騒ぎになった。
それによって、俺の女装の印象が薄れた気がした。
なので、女装を解除して元のいつもどおりの格好に戻った。

「何? ユーキ。もう私の真似は終わりなの?」
「ああ、あまり引き伸ばしても冷めるし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ