第一章
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ている浅間がネシンバラの方を見て深く頷いた。
浅間はハナミを呼び出し、表示枠を宙に出した。
「"公主隠し"は、普通の神隠しとは違います。普通の神隠しは、空間を創る流体が乱れ、その裏側に入ってしまうだけだから、消えた人間の存在は消えないんです。術式を使えば、御霊や身体、身に着けていたものの存在から位置を追えます」
しかし、
「"公主隠し"は、――全部消えてしまい、戻ってこない。魂も身体も、持ち物も、完全に消えてしまう」
●
「おお! 兄ちゃんマジで姉ちゃんそっくりだな!」
「カツラまで用意してたからな。胸は詰め物入れて何とかなったし、結構イケてる?」
「イケてる、イケてる。じゃあ、俺は行くけど、後は適当に驚かせてくれよな!」
双子とはいえ、男と女の違いはある。
しかし、葵・ユーキと葵・喜美は似ている。
身長は若干葵・ユーキが高いが、身体は男にしては細身である。
その為、女装をするには適切な身体であったのだ。
時折、葵・トーリが女装をする際に多くの男が騙されてしまうように、葵・ユーキもまた、女装すると劇的に似合うのであった。
それは、誰が見ても葵・喜美であり、ニ人が揃えば同じ人間がニ人いるという矛盾が生じる。
それが、葵・トーリが発案した驚かしのタネである。
●
「――はい、というわけで、図書館到着ですよ」
という浅間の声に、三つの人影は頷いた。
影の一つ。レンチを担いだ直政が、うんざり顔で、
「どうだいアサマチ、霊視の無いあたしらにゃいても大物以外は見えないんだけど」
彼女の横で、持ち込んできた練習用従士槍に除霊の札を貼っていたアデーレも吐息混じりに、
「ですよねー……。ラップ音とか、そいういう解りやすいものだといいんですけどねー」
「そ、それは、ちょ、こ、困ります。音は……」
最後の人影である鈴が慌てて答えた。
暗い廊下の曲がり角、そこに女がいた。
女装した葵・ユーキだ。
「む。"木葉"に反応です」
浅間が緑の瞳を向ける。
同時に、弓を構えて廊下の曲がり角に射撃した。
「――アレ?」
首を傾げる浅間に、直政は無言。アデーレは慌てて、鈴はその女の正体を見破っていた。
「な、何? 何です?!」
「外れた……。というか、避けられました」
「あ、ゆ、ユーキ君……?」
「アサマチの矢を避けるなんて芸当できるとなると、ユーキだろうさね」
何気に、あの辺にいたモノを除霊しましたね。ユーキ君は。
アレを持ち込んでいるとなると、制裁はいつも以上に痛いものになるでしょうね。
しかし、私の矢は避けられましたね。相変わらずの回避率です。
もっと弓の腕を磨いて射撃できるようにしないと……。
「ユーキ君。怒らないから出てきなさい
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