第一章
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座ったまま、頬杖をついて弟のいる学校敷地外の自然区画の先、後悔通りの前に視線を向けていた。
「愚弟なんだから、怖くなったらいつでも戻ってきていいのよ」
そう、呟いた。
「ユーキは行方不明だし、愚弟を見守るのは賢姉の役目よね」
ユーキは何をしているのだろう。
どうせくだらないことだと、喜美は思う。
しかし、
「兄ラブの妹を放置しといて、他の女の所にいたら赦さないわよ……!」
視線の先、トーリが動いた。
だが、突然クネクネしたり、反復横跳びを始めたり、街灯の柱でポールダンスをしていた。
「トーリは何やってんの? アレ。新種の遊び? あと、ユーキは今日サボりよね?」
「フフフ、先生。学食で酒飲んでたって聞いたけど? ユーキはサボりみたいね。朝、朝食が作りおきしてあったけど今日ユーキの姿は見てないわね」
「説教が必要かなー。まあ、サボりの為の点数稼ぎはしてるから注意くらいになりそうだけどね」
普段、真面目だからこういう時に有利になるのよね。
「女教師と兄生徒の禁断の関係にならないようにしてよね」
「ハハハ、ないない」
笑いながら手櫛《てぐし》で髪を整え始めたオリオトライに喜美はそれでは髪が傷むと、懐から取り出した櫛《くし》でオリオトライの髪を梳《す》いていく。
ニ人が眺める先、トーリが街頭の柱に上り、最高地点で立っているトーリに、
「頑張れ頑張れ」
オリオトライが言った。
それは、トーリに向けられた言葉であった。
「フフ、先生は愚弟の味方になってくれるの? それとも愚弟に惚れてるの? やめときなさい、惚れるならユーキにしなさい。でも、本気で惚れたら私は嫉妬するわっ! 嫉妬!」
「何言ってるのかわからないけど、少なくとも先生のクラスの皆に対しては絶対に味方だから」
学生間抗争には関われないけどね、と言った。
「んー? アレは正純か。変なとこ抜けるわね」
「あの副会長、何のつもりかしら?」
後悔通りを目指しているみたいだけど、副会長は誰か探している様にも見える。
「まさか、ユーキでも探しているんじゃないでしょうね。それは無駄よ」
「どうして?」
オリオトライが疑問を喜美にぶつけたのだが、
「だって、ユーキは隠れんぼで誰にも見つかった事無いもの。ユーキ自身が出てくるまで見つけ出すのは難しいわ。エンジョイ隠密ね!」
喜美の答えに、オリオトライはまともな答えを期待してはいけないと思ったのだ。
●
三河郊外、木造の室内に男たちの声が響いていた。
松平四天王の内、三人が揃っていた。
その中に女が一人、本多・忠勝の娘である本多・二代は父親たちが酔っ払い、既に同じような話が三回ほど続いていた。
改めて紹介をしてもらって、まもな
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