第27話 雨宿り その1
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
宇宙歴七八六年8月 バーラト星系 ハイネセンポリス
士官学校を卒業して二度目の八月。俺は一年ぶりにハイネセンの地を踏んだ。
だが次の任地はフェザーンだ。まず統合作戦本部人事部に顔を出さなくてはならない。原作のユリアン同様、フェザーン駐在武官の任免は人事部長の直接管掌するところであるから、人事部長のアポイントを取らなくてはならない。中尉昇進の時のように小さな分室で課長(中佐)より辞令を渡されるのではなく、中将の執務室で直接手渡されるのだ。昇進業務が中心の課長ではなく、他に業務のある部長のアポイントは非常に取りにくい。なんで赴任側が命令側のアポとらなきゃいけないのか、いまいち分からないがそれが規則なら仕方ない。
ハイネセンからフェザーンまでの旅程は約五〇〇〇光年。旅客船で三六日、貨物船で四〇日、軍の高速巡航艦でも三〇日はかかる。当然の事ながら駐在武官の運送しかも大尉ごときに、高速巡航艦が用意されることはないので、必然と旅客船を使う羽目になる。必要経費で支払われるとはいえ、これまた旅費が高い。貨客船であればまだ若干安いんだが、これほど長距離になると大型貨物船の余剰船室でもそれなりに値が張るし不定期だ。
一番安く行く方法は軍の定期便(基地間定期連絡船)を乗り継いで行く方法だが、ジャムシード星域まではまだ何とかなっても、その先のランテマリオ・ポレヴィトといった星域への便となると非常に少ない。さらにポレヴィト−フェザーン間は特別な許可がない限り、軍用船舶の侵入は許されていない……誰が決めたか知らないが。
つまりフェザーン行きの旅客船のダイヤを見つつ、ある程度の余裕を見てハイネセンを旅立たなければならない。と、なると当然ハイネセンでの滞在時間は短くなるわけだ。
「アントニナ。お前、学校はどうしたんだ?」
荷物といえば将校用の鞄ひとつな俺が、ハイネセン第三宇宙港(軍民共用)に到着した時、到着ロビーの噴水前から、さも当然とばかりに手を振るアントニナの姿を見て、俺としては心配を隠せない。グレゴリー叔父もレーナ叔母さんも、学校をサボって向かえに来ることを許すとは思えないのだが……
「お母さんが迎えに行きなさいって。ジュニアスクールの試験も終わったし、選択授業は別にいつでも受けられるから学業は問題なし」
「……まぁ、それならいいが」
一年前に同じ宇宙港の搭乗ゲート越しに見た姿よりも五センチ以上は大きくなっているアントニナを見て俺は溜息をついた。既に一六〇センチはあるだろうか。相変わらずの薄着で、胸は身長ほど発育していないようだが、腕もホットパンツから伸びる腿にもうっすらと筋肉がついているから、一見した限りではもう一二歳には思えない。
「兄ちゃん、どこ見てるのかな? フレデリカみたいに叫んで蹴りを入れてもい
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ