第七話
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もかく、見かけ倒しでないことは確かなようだ。一緒に路地へ消えて行ったディアベルが話をつけてさえくれれば、彼の思惑通り情報が回って行くだろう。
しいて不安を言うならば、この突然な呼びかけにはたしてどれほどのプレイヤーが応えるかだが、これはただの心配性だろう。そういったヘタレ連中のほとんどは今も《始まりの街》に引きこもっているのだから。
「――やっぱり、ディアベルも……」
アルゴとディアベルの姿が完全に暗闇へと消えたと途端、シーラが重く声をもらした。
「ん?ディアベルが……何だって?」
見送りの手をやめ、俺は後方にいるはずのシーラに会話を返す。彼女の台詞に覚えたわずかな引っ掛かりを、脊髄反射並みの反応速度でシミュレートしながら。
いつも通りなら、この類の雰囲気を出したシーラは、ここから話をイイハナシカナー?な展開に持っていき、俺が深く切り込んだところで落としからかうという順を定石とする。幾度となく騙され続けた、思い入れなんて毛ほどもないパターンの戦略だ。
いつからだろうか、彼女のイタズラに慣れ、その内側の感情が見えるようになったのは。
そう昔のことではないはずだ。何百という回数を重ねて、俺はシーラの戯れを見透かす眼を手に入れるに至った。
そんな俺の本能が反応したのだから、当然、今回のシーラの頬にもワルガキの笑みが滲んでいるだろうと、そう思い、シミュレートも一式完了した俺は、ある種の覚悟と共に後ろを振り返った。
「………」
だが、うつむいて『不思議』に悩むシーラの表情に、俺はそれ以上のモノを見つけることができなかった。
「……どうしたんだよ」
自分の予想が盛大に的外れしていたことに落胆し、心眼使いはまだまだ遠いと、一人で繰り広げた大反省会も一段落ついた俺は、その間――時間にして十秒にも満たないが――以降の言葉を続けずにいたシーラを目の前に腕を組み、息を吐いた。
催促も兼ねた一息に、ようやく気付いたのかシーラの瞳が少し持ち上がる。そうして彼女はしばらくの間何か迷うように唇を結んでいたが、やがて決心がついたようで、ぱっと顔を上げると勢いよく言葉を走らせ始めた。
「ユウ、あたしやっぱりディアベルって元テスターだと思うんだ」
「は?テスター?」
『予想外』に弱い俺の身体と思考回路がつくりだした顔と声に、シーラがうんうんと首を縦に振る。
「ユウは寝ちゃってたから知らないと思うけど、アルちゃんとディアベルが顔合わせした時、ディアベルがさ……すごく気まずそうな顔してたんだよ。会いたくない人と会っちゃった、みたいな顔」
アルちゃん。アルゴのことだろう。やはりあだ名で呼び合ってたのか。そういえば俺ってあだ名付けられたことないよな。なんていう空気の読めないことをお
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