第七話
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、突如としてトーンを変える。慌てているような……まて、今最初の声はなんと言った?
「……ふふ……日頃の恨み……っ!」
――ガツン
今日はよく聞く鈍い音。が、今度は快感なんてものは欠片もなく、代わりに眼前に舞い散る星々と広大なベンチの木板が現在の状況を示してくれていた。
一拍遅れてやってきた脳天を貫く不快感を、再起動しない身体と未だ混沌な脳みそで処理しようと試みていると、後方で鳴った知らない声が、呆れと堪え笑いをもらして言った。
「キ、キレイに入ったネ……ゲンコツ……お見事だヨ……」
「うーん、これであたしもすっきりした!あ、でもユウ、今日二回叩いたよね?まだ寝てるならもう一回……いや、いっそのこと二発三発――」
「なあシーラ……関節技ってキまると超痛いって知ってるか」
『喜怒哀楽』とその他もろもろを通り越して出た変な笑いに、通常運転だったシーラの笑顔から『楽』の感情が少しばかり抜け落ちる。
他に効果的な方法が思いつかなかったのか、はたまた無意識に出た俺の対応が効果的に決まったのか、『笑って誤魔化す』以外の選択肢がコマンドに現れず、わたわたするシーラ。その哀れな末路に、始終楽しげに笑っていたディアベルが不意に声を発した。
「まあ、それはまた後でゆっくり話し合ってもらうとして――情報屋さん、早速だけど依頼の話、いいかな?」
ディアベルが止めてくれさえすれば話し合い(物理)せずに済んだのにな、と脳内で呟きながら体を起こすと、瞬間にシーラの肩もビクリと跳ねる。どうやら今の俺の顔は相当なヤバイことになっているらしい。
これはいかんと、キャラ崩壊寸前の変顔からなんとかポーカーフェイスに移行すべく顔の筋肉の修正を行っていると、いつの間にか視界内にとらえた特徴的な抑揚をもつ声の主、というより特徴的な鼻声のかかった声の主が、被ったフードの下でにやりと笑い、もたれかかった石レンガの壁の奥、薄暗い通路を親指で指した。
「アア、大体シーチャンから聞いタ。今回限リ、特別にタダにしといてやるヨ。来ナ、ディアベルさン」
『シーチャン』というのはシーラのことなのだろうか。ディアベルが『情報屋さん』と呼んでいたことも合わせてみるに、この甲高い鼻声の主が、シーラの呼んだ『鼠のアルゴ』という女性プレイヤーなのだろう。
――《鼠》と五分雑談すると、知らない内に百コル分のネタを抜かれるぞ。気をつけろ。
なんていう噂に違わぬふてぶてしいニンマリ顔だったが、同時に見えた頬のおヒゲ系三本線と金褐色の巻き毛、小柄なその体型も相成って、裏世界の凄腕情報屋というシーラの中二病説明で受けた印象よりは、とあるげっ歯類に近く思えてしまう。
濁さずともその通り名の通り、彼女にも自覚はあるのだろうが、と
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