第七話
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ていたこともあった。
これに関してはストレスマッハと化した俺が全力で止めたが、恒例行事というのは、要するにそういうことなのだ。
ともあれ、今回はそんなシーラの厄介癖が役に立った。
「なあ、本当に来るんだよな、その……なんとかっていう情報屋」
「さっき隣町を出たってメッセージが来たばっかりじゃん――ユウ、あの時の戦闘もそうだけど、もっとゆっくり行こうよ。急がずにさ。そーいうのを『タンサイボウ』って言うんだよ?」
木製のベンチに背を預ける俺に、噴水端のシーラがドヤ顔で指を一振りし、ウインドウを閉じる。
単細胞の意味間違ってないかといつもの調子で頭にツッコミが浮かぶが、実行する気も起きず、俺はわかったわかったと手をひらひらさせると再びベンチに全体重を預けた。
途端にわきから聞こえる爽やかな笑い声を聞き流していると、その発信者が爽やかの尾を引いたまま、視界外で俺と同様の不安をもらした。
「それにしても彼女、遅くないかな。隣町ってそう遠くないだろう?」
「うーん。そう言えばそうだよねぇ。やっかいなモンスターにでも引っかかっちゃったのかな?あの人なら大丈夫だと思うけど……」
空目を向き、シーラが首をひねる。
俺とディアベルとでこうも反応が違うのか。
舐められちゃってるのかな俺、などという掠れた笑いを口から漏らし、降り注ぐ何か言いたげな日の光に、俺はゆっくり、瞼を閉じた。
身体が暖かい。
思えば、こんな無防備状態で日を浴びるなんて久しぶりだ。もっと言えば、町(圏内)に入って最初に向かう場所がNPCショップでなかった、なんてことも。記憶によれば、例外は初期のころの数回だけだった。
その数回以降、一応現在までもだが、俺とシーラは東の森林エリアを拠点にし続けている。日を浴びるのが久しぶりというのは、日々を過ごしていたのがその森林のさらに奥、経験値効率のいいサル系のモンスターの住まう光もろくに届かない密林であったからなのだ。
そんな暗闇の日々と引き換えに、俺はそれなりのレベルと装備、相方との連携を手に入れた、わけなのだが――
「――お……い……おーい……ユウ……」
どこからか声が聞こえる。聞き覚えのあるような、だがもやがかかってはっきりと見ることができない、鈍く反響する音。
「……めだ……かんぜ……ちゃって……だから……いったの……」
「……ふたりと……じかんまデ……てたネ……」
前者は先ほど俺の名を呼んだ声と似ているが、後者は何者なのだろう。語尾に妙な抑揚のついたしゃべりで何やら言っている。
「……しっかたない……一発グーパンチなら……起きるよね」
「……エ……殴るノ……グーで……さすがにそれは……」
抑揚のついた声が
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