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第一章
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「どっちでもね」
「わかった、ヒットでも何でもな」
「それで私の勝ちね」
「そうだ。今日も抑えてやる」
「今日も打ってあげるわ」
 浩二も真里も不敵に笑い合う。それが終わってから浩二は大きく振り被った。真里も身体に力を込める。そして浩二は投げた。
 ストレートだった。それが内角高めに勢いよく入っていく。
「よし!」
 彼はそれを投げた瞬間に会心の笑みを浮かべた。
「これは打てないぞ!」
「読み通り!」
 だが真里はそのボールを見ても動じてはいなかった。
「だがこれが打てるか!」
「甘いわね!」
 真里は腕を畳む。そしてコンパクトに振り抜いた。
 スカートが舞いその中にあるものが見えた。しかし真里はそれに構わず思いきり振り抜いたのであった。
 見事であった。ボールはレフト前へと弾き返された。誰も守りには入っていないが誰が見てもわかる奇麗なヒット性の当たりであった。
「あれを打ったのか」
「どう?奇麗なヒットでしょ」
 真里は歯噛みする浩二に対して言った。
「得点圏にランナーがいたらタイムリーね」
「チッ、俺の負けか」
「そうね。けれどいいボールだったわ」
 この言葉は勝者の余裕がいささか聞いて取れた。
「速さも球威もあったしね。読んでいなかったらあたしでも打てなかったわよ」
「だが打たれたってのは事実だからな」
 浩二の顔は歯噛みから憮然としたものになった。
「俺の負けた。ジャムパンだな」
「だからチョコレートパンよ」
 真里はそう言い返す。
「さっき言ったじゃない、それ」
「そうだったか」
「そうよ。もう売店売り切れてるからコンビニでね」
「ああ。しかしな」
「何?」
「御前いつも制服の下それなのか?」
「そうよ。悪い?」
 スカートの下は半ズボンであった。体育の授業で使っているものである。よく見れば丈の短いスカートからもそれがチラチラと見えている。
「何かなあ」
「だってあたしいつも走ったり何かするじゃない」
「ああ」
「だからよ。いつも履いてるのよ」
「そうなのか」
「そうよ。それとも何?」
 何かと言いたげな浩二に対して問う。
「あたしのパンツでも見たいっていうの?」
「ば、馬鹿言え」
 何故かその返答の声はムキになっていた。
「何でそうなるんだ」
「だって不満そうだったし」
 真里はそんな浩二に対して言う。
「違うんならいいけれど」
「そんな筈ないだろ」
 だがその否定も何処かムキになっていた。
「どうしてそうなるんだ」
「言っておくけれどあたしの下着なんて期待しないでよ」
「誰がっ」
「今日は白だけれどね」 
 自分から言うのは何故であろうか。それは実は真里にもよくわかってはいなかった。
「期待しないでよね。あたしのだから」

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