第一話
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のか、彼の足跡は全く分からない。まだ一人で戦っているのだろうか――
「(……元気にしているだろうか)」
感情の希薄なソウガにしては珍しく、感傷的な気分になる。
「……帰るか」
考えているだけ無駄だ。櫂はもういない。
ソウガは机の横に掛けた鞄を取り上げると、今だ騒然とする教室内を抜け出した。
校舎を出ると、春先のいまだ冷やかな風がソウガの頬を撫でた。冬の寒さはまだ少し残っている。これからあと一か月もすれば異様な暑さになるのだろうが、今はまだ涼しい時期が続くだろう。
ソウガはどちらかといえば夏よりも冬の方が好きだった。理由は自分でもよくわからない。が、なんとなく、ソウガにとっては冬の方が親しみやすかった。
――――暗い。さびれている。そんな印象を与えるからだろうか。
廃れた存在。まだ芽吹いていない存在。
ソウガは、そんな弱小の存在が好みだった。これもまたなぜなのかは分からない。結局のところソウガには、なぜ自分が冬が好きなのか、その理由は分からなかった。
――――なぜ、こんな感傷的になっているのか。
――――簡単だ。櫂を思い出したからだ。
ちょうど、奴が現れたのもこんな気候の頃だった。と言っても、春先ではなく秋はじめのことだったが、涼しさがかすかにあるという気候は変わらない。
恐らく、自分は飢えている。
ここ数日、今の自分の生活がつまらない、と再認識する事態に、ソウガは陥っている。櫂がいたころは、ほぼ毎日奴とカードファイトをしたり、町のカードショップに通っていた。あのころが一番楽しかった。今は、つまらない……。
「……そう言えば、あの店はまだ続いているのだろうか。つぶれそうだったが」
久しぶりに、足を運んでみるのも悪くはない。
もしかしたら、何か面白いことに出会えるかもしれない。
そう――――いつだって、『それ』は自分を情熱の中に連れて行ってくれた。
『ヴァンガード』の、本気のカードファイトは。
***
「ほぅら、《サベイジ・キング》のアタックだ!」
「くっ……ダメージチェックです……」
デッキトップをめくる。右上には何のアイコンもついていない。
ブランクカード……それはつまり、自分がこのファイトに敗北したことを示していた。
翡翠シノは歯噛みしながら、そのカードをダメージゾーンに置く。六枚目のカードとの契約が解除される。同時に全てのカードとの契約が解除。ゲームーオーバー……
「きゃぁぁぁっ!」
ずがががががっ、という衝撃がシノを襲う。一年前にFFコーポレーションが発売した、カードファイトにおける自らの分身が受けるダメージを
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