星の長は希う
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誰もいない。
星座が描かれた天井に、床は魔法陣と古代文字。魔水晶の柱が僅かな光を受けて煌めいている。
そんな部屋の中央で、1人の少女が囚われていた。両手首には枷を填められその枷からは鎖が伸び、華奢な体躯は大きめの玉座に埋まるように腰掛けていた。
動きやすそうな服に身を包み、宝石のように輝く青い髪をふわりと長くおろし、頭には白い大きめの帽子。つり気味の透き通るような青い瞳は、どこかに焦点を合わせる訳でもなく宙を彷徨っていた。
(何やってるのよ、私は)
少女―――――ティアは、いつものポーカーフェイスをガラリと崩していた。先ほどまでの嘲りと憎悪の声が止んで暫く経ったが、耳の奥にはその声が残っている。
聞き慣れていたはずだった。幼い頃から、嫌悪と憎悪と殺意の中で生きてきた。だから誰かからドス黒い感情を向けられようと慣れたもので恐怖はまるで感じなかったし、聞き流せるレベルにまでなっていたはずなのに。
(甘くなってる。アイツ等の生半可な優しさの近くにいる時間が長すぎて、甘くなってきてる)
それは、暫くやっていなかった事を突然始めた時に中々感覚が掴めないとの似た感じか。
魔導士としての仕事で敵意を向けられるのはよくある事だ。が、それは彼女が幼い頃に感じていたそれらとは比べ物にならないくらいに小さくて、その手の感情よりもナツ達から向けられる信頼やある種の尊敬のようなものが大きくて、一気にこれ程の悪を感じたのは久々だった。
周りに頼れる人はいない。その環境は昔と何も変わっていないはずなのに、誰かが周りにいた時間が長すぎて、どうしていいか解らなくなりそうだ。
(こんなの日常茶飯事だったのに。悪意を向けられるくらい、当然だったのに!)
唇を噛みしめ、拳を握りしめる。
自分が弱くなっている―――――そう認めるのが、嫌だった。弱点を認めるのは出来る。ティアにとって、弱点というのは強くなる為に必ず見なければいけない現実でしかなくて、現実はどう足掻いたって変わらないのだから見るしかない。諦めに近いが、それで無理矢理にでも自分を納得させていた。
が、弱点を見るのと自分が弱いと認めるのは似ているようで異なる。弱点がピンポイントであるのに対し、“弱い”というのは全体だ。強い所も弱い所もどちらでもない所もひっくるめての“弱い”だとティアは思っている。
つまりティアが弱くなっているという事は、精神的な意味以外に振るう力さえも弱くなっているという結果に結びつく。たとえ実際そうでなかったとしても、認めたくない。
生きる為に力を欲し、力がなければ生きていけず、力があったからここまで来れたからこそ。
(認めない、認めたくない!悪意の1つも流せない甘えを認めるなんて!)
それは彼女のプライドの高さが禍した結果か、それとも決
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