星の長は希う
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「苦しんでいる息子を放っておくなんて、出来る訳ないじゃないか」
先頭を駆ける。追いつかれないように、スピードを上げる。
これなら、誰も自分の顔に気づかない。まさかアルカが泣いているなんて、誰も気づきやしない。
(……何が“息子”だよ。オレは息子らしい事、何もしてねえのに)
涙を拭ったら、その仕草でバレてしまう。
自然に乾くのを待ちながら、それでも涙は止まらなかった。歯を食いしばっても、どんなに堪えようとしても。
(アンタは父親らしい事してくれてたのに、オレは何もしてねえじゃねえか)
敢えて言わなかった。気づいていたけれど、言わなかった。
自分を回復してくれたのがエストだと気づいていたけれど、気づいていないフリをして、誰よりも早くあの場を抜け出したくて、先頭を突っ走る。
「……あの、バカ親父っ…」
呟く。
涙声なのに気づいて、必死に涙を堪えようとする。
それでも涙は止まらなくて、アルカは止まらない涙への苛立ちや原因不明の怒りを吐き出すかのように、もう1度呟いた。
「気ィ失うんじゃねえよ……1回くらい、“ありがとう”って面と向かって言わせろよ……!」
カトレーン本宅。
その一室―――――広い書斎の窓から、シャロンは外を見つめていた。
迷宮は壊れ、数人の魔導士がこちらに向かっている。もう使える駒はない。シャロン本人が出るしか、選択肢はない。
「……いいわ。彼等に見せてあげましょう」
白髪の混じった青い髪を揺らす。
大きな扉を室内にいた明るい水色の髪のメイドが開け、それが当然であるかのようにシャロンは部屋を出ていく。
バタン、と扉が閉まる音を背後に、シャロンは告げた。
「カトレーンを敵に回すとどうなるか、その身で教えてあげるわ」
遂に、最後の戦いが始まる。
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