星の長は希う
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本当に困った時に見せる表情に似ていて、2人が親子である事を実感させられた。
「でも、私はアルカンジュが5歳の時にアイツを1人残してしまった。悪魔になってしまったアイツをこれ以上闇に触れさせたくなかったんだ。……まさか、後に敵対する事になるなんて思わなかったけどね」
「……なんで、闇ギルドに…」
「それは聞かないでほしいな、ミラ嬢。我がギルドの機密だからね」
困ったように笑うその顔も、アルカにそっくりだ。
きっとアルカはお父さん似なんだ、とミラは思う。母親にあった事がある訳ではないが、顔立ちなどは父親であるエストに似ている。
「けど…それでも、私は実は嬉しかったよ」
「え?」
「敵対するって事は戦うだろう?私が願った形ではなかったけれど、やっと親子喧嘩が出来たんだ。遠慮なんてしないで、言いたい事を全部言って。きっとアイツが聞いたら怒るだろうけど……私は、楽しかった」
こうやって何でも“楽しかった”と言ってしまうところも、似ている。傷ついても、嫌な思いをしても、最終的には楽しかったと言い切ってしまうところが。
「喧嘩出来るって、遠慮がいらない仲だって事だと思うんだ。男同士だからこその喧嘩を、してみたかった。私はあまり父と言い合う事はなかったから……アルカンジュが生まれた時、シグリットのお腹の子供が男だと知った時、本当に…本当に、嬉しかったんだ」
言葉1つ1つを噛みしめるように、エストは紡ぐ。
ふわり、とクリムゾンレッドの髪が風に揺れた。
「だから…私は満足だった。勝っても負けても、息子と初めて対等に喧嘩が出来て満足だったんだ。私が最後の一撃を受けたのは……1度くらい、アイツに父親らしい事をしたかったからだよ。息子のする事を後押ししたかったんだ、たとえ負けるとしても。1度くらいは、父親らしくしたかった」
それも私の勝手なワガママなんだけど、と呟く。
じわりと涙が浮かんだのを、ミラは見逃さなかった。
「…頑張れって、負けるなって、応援してるって……言いたかったんだ」
浮かんだ涙を指に乗せるように拭う。
結局言えなかったけどね、と呟くエストの横顔はどこか寂しそうで、泣き出しそうだった。
そんな彼を見つめるミラは、もう1つの問いかけをする。
「それじゃあ、もう1つ。……なんで、私達を回復したの?」
計画を成功させる為なら、放っておく事だって出来たはずだ。むしろ放っておいた方が成功の可能性は高くなる。
それを知っていながらであろう行動に疑問を抱くミラに、エストは微笑んだ。
「そんなの、当然だろう?」
顔は向けない。目も合わせない。誰もいない場所を見て、エストは呟く。
拭ったはずの涙が頬を伝い、でもそれを拭う事はせずに、もう会えないかもしれない息子の姿を思いながら。
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