皮肉を嫌う男
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
真逆でもあるところが、癪に触った。もちろん仲間として認めてはいるし、あの女よりは好ましい娘だったと思う。
だからこそだ。シーナを好ましく思いふと気を抜いたときに、彼女と同じ皮肉が飛び出す。それが我慢ならなかった。
「お前の皮肉は嫌いだ、シーナ」
嫌でも死んだ女を思い出す。
*
――――そして。
姫がおかしくなり、ジッリョネロがなくなり、ミルフィオーレと名を変えたあと。
シーナは白の制服を着て、入江正一と言う男の懐刀となっていた。腹立たしいと言う仲間も居たが、それが一番良いシーナの立場だっただろう。
シーナと入江は日本に居た時代の知り合いだったというし、悪いようにはされていないらしい。常に入江と一緒にいるのは、黒からも白からも良く思われていないシーナの身を守るためだろう。
さらに入江は根っからの科学者で、戦闘に駆り出されることはなく、すなわちシーナも戦場に立つことがないということだ。それは戦闘能力のないシーナにとって、悪くない条件である。
俺はこれでもシーナと交流が深い方だったし、戦闘面では最弱だったシーナの面倒を良く見ていたので、彼女のことを人並み以上に気にかけていた。
あるとき、幻騎士が俺を訪ねてきた。こいつは姫や俺らを裏切り、白蘭についた男で――――つまり、俺を訪ねる理由など見当たらないと言うことだ。
「何の用だ? 楽しく談笑しようってわけじゃねぇんだろう?」
「今回はシーナのことだ」
「シーナ? おい、どういうことだ?」
「彼女が白蘭側に寝返った、という噂が真しやかに流れているのは知ってるいか?」
「ああ、それはさすがに知ってるさ。根も葉もないただの噂だ」
「そうと言い切れないとしたらどうだ?」
幻騎士曰く。
その噂のソースとなったのはあの白蘭本人で、シーナが命令を素直にきいたと証言したらしい。その命令の内容が問題で、運命のあの日、ユニと白蘭が二人きりで話し合いをしたあの日、姫の飲んだ茶に薬を入れるよう命令されたと言う。
シーナはそれを素直に実行した。姫への、ジッリョネロへの、裏切り行為のような命令だというのに、文句ひとつ言わずこなしたと言うのだ。
「それは確かなんだな?」
「間違いない。シーナ自身も認めた」
入江が対処をしているが、もう既にシーナを排除しようとする人間もでてきてるらしい。
だからシーナと親しい俺に知らせろという命令を受けたと、幻騎士は言った。
シーナが姫を裏切った?
そんなことあり得るはずがない。理屈ではなく、絶対にないのだ。シーナが姫を裏切るなど、天地がひっくり返っても起こることはない。
シーナへ、姫が最後に言った言葉を、俺は知っている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ