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皮肉を愛す女
皮肉を嫌う男
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真逆でもあるところが、癪に触った。もちろん仲間として認めてはいるし、あの女よりは好ましい娘だったと思う。
 だからこそだ。シーナを好ましく思いふと気を抜いたときに、彼女と同じ皮肉が飛び出す。それが我慢ならなかった。

「お前の皮肉は嫌いだ、シーナ」

 嫌でも死んだ女を思い出す。









*









――――そして。
 姫がおかしくなり、ジッリョネロがなくなり、ミルフィオーレと名を変えたあと。
 シーナは白の制服を着て、入江正一と言う男の懐刀となっていた。腹立たしいと言う仲間も居たが、それが一番良いシーナの立場だっただろう。
 シーナと入江は日本に居た時代の知り合いだったというし、悪いようにはされていないらしい。常に入江と一緒にいるのは、黒からも白からも良く思われていないシーナの身を守るためだろう。
 さらに入江は根っからの科学者で、戦闘に駆り出されることはなく、すなわちシーナも戦場に立つことがないということだ。それは戦闘能力のないシーナにとって、悪くない条件である。
 俺はこれでもシーナと交流が深い方だったし、戦闘面では最弱だったシーナの面倒を良く見ていたので、彼女のことを人並み以上に気にかけていた。


 あるとき、幻騎士が俺を訪ねてきた。こいつは姫や俺らを裏切り、白蘭についた男で――――つまり、俺を訪ねる理由など見当たらないと言うことだ。

「何の用だ? 楽しく談笑しようってわけじゃねぇんだろう?」
「今回はシーナのことだ」
「シーナ? おい、どういうことだ?」
「彼女が白蘭側に寝返った、という噂が真しやかに流れているのは知ってるいか?」
「ああ、それはさすがに知ってるさ。根も葉もないただの噂だ」
「そうと言い切れないとしたらどうだ?」

 幻騎士曰く。
 その噂のソースとなったのはあの白蘭本人で、シーナが命令を素直にきいたと証言したらしい。その命令の内容が問題で、運命のあの日、ユニと白蘭が二人きりで話し合いをしたあの日、姫の飲んだ茶に薬を入れるよう命令されたと言う。
 シーナはそれを素直に実行した。姫への、ジッリョネロへの、裏切り行為のような命令だというのに、文句ひとつ言わずこなしたと言うのだ。

「それは確かなんだな?」
「間違いない。シーナ自身も認めた」

 入江が対処をしているが、もう既にシーナを排除しようとする人間もでてきてるらしい。
 だからシーナと親しい俺に知らせろという命令を受けたと、幻騎士は言った。

 シーナが姫を裏切った?
 そんなことあり得るはずがない。理屈ではなく、絶対にないのだ。シーナが姫を裏切るなど、天地がひっくり返っても起こることはない。

 シーナへ、姫が最後に言った言葉を、俺は知っている。
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