皮肉を賛す女
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
の段階になって、ようやく目を開ける。あるのは豪華な部屋と、白蘭と、ツっ君だけ。
両腕を上げ、彼の心臓を狙う。外すと言うことは頭に無かった。ジッリョネロの頃もジェッソの頃もミルフィオーレの頃だって、私は射撃練習は怠らなかった。一般人では考えられない、それなりの腕だ。
狙う。狙う。あの心臓を止めるために。
すると、ツっ君は笑った。柔らかに、優しく、私の知っている笑顔で――――
腕に衝撃が走る。撃ったのだ。
*
(両親共にそのファミリーの人間ってのは、すげーことなんだ。誇っていいぞ、椎菜)
(……あなたにしか、頼めないの。よろしくね)
(お前の皮肉は嫌いだ、シーナ)
(百蘭の命令は絶対に聞いて。例えそれがどんな命令だとしても)
(シーナ。お前のような皮肉の塊の人間は、死んでも文句言えねぇさ、きっと)
(耐えて。シーナ、時を待って。まだその時じゃないわ)
(劇薬。詳しい名前は知らないほうがいいよ)
(はい、もしもし?)
(椎菜……?! お前、どうしてこんなところに?!)
(だから椎奈、生きて)
(君の幼馴染、殺して見せて?)
(君は、みんなの希望なんだよ。それで撃ってくれ。――――だから、そのためにも、自分の命を捨てるような真似はしないで)
(かえろうよ、椎菜ちゃん。いたいなら、ぼくがおんぶしてあげるから。かえろ?)
いろいろなことを――――思い出す。けれど、私が最後に思い出したのは、何故かγの台詞だった。
(…………いいか、覚えておけよ、小娘。大切であればあるほど、護るときには武器を握らなければならない。しかし、武器を持ったままでは、大切な人間を抱きしめられないんだ。それを決して、忘れるな)
今の私は、どうだろう。
これ以上ないほど大切だったから、私はユニとツっ君を殺すしかなく、また、武器を持ったままでしか、彼を抱きしめることが出来ないのだ。
(素晴らしい皮肉だ、γ)
夕陽でない赤に染まったツっ君を抱きしめながら、そう思った。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ