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皮肉を愛す女
皮肉を賛す女
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の段階になって、ようやく目を開ける。あるのは豪華な部屋と、白蘭と、ツっ君だけ。

 両腕を上げ、彼の心臓を狙う。外すと言うことは頭に無かった。ジッリョネロの頃もジェッソの頃もミルフィオーレの頃だって、私は射撃練習は怠らなかった。一般人では考えられない、それなりの腕だ。
 狙う。狙う。あの心臓を止めるために。


 すると、ツっ君は笑った。柔らかに、優しく、私の知っている笑顔で――――


 腕に衝撃が走る。撃ったのだ。





*





(両親共にそのファミリーの人間ってのは、すげーことなんだ。誇っていいぞ、椎菜)
(……あなたにしか、頼めないの。よろしくね)
(お前の皮肉は嫌いだ、シーナ)
(百蘭の命令は絶対に聞いて。例えそれがどんな命令だとしても)
(シーナ。お前のような皮肉の塊の人間は、死んでも文句言えねぇさ、きっと)
(耐えて。シーナ、時を待って。まだその時じゃないわ)
(劇薬。詳しい名前は知らないほうがいいよ)

(はい、もしもし?)
(椎菜……?! お前、どうしてこんなところに?!)
(だから椎奈、生きて)
(君の幼馴染、殺して見せて?)
(君は、みんなの希望なんだよ。それで撃ってくれ。――――だから、そのためにも、自分の命を捨てるような真似はしないで)

(かえろうよ、椎菜ちゃん。いたいなら、ぼくがおんぶしてあげるから。かえろ?)


 いろいろなことを――――思い出す。けれど、私が最後に思い出したのは、何故かγの台詞だった。


(…………いいか、覚えておけよ、小娘。大切であればあるほど、護るときには武器を握らなければならない。しかし、武器を持ったままでは、大切な人間を抱きしめられないんだ。それを決して、忘れるな)



 今の私は、どうだろう。


 これ以上ないほど大切だったから、私はユニとツっ君を殺すしかなく、また、武器を持ったままでしか、彼を抱きしめることが出来ないのだ。



(素晴らしい皮肉だ、γ)



 夕陽でない赤に染まったツっ君を抱きしめながら、そう思った。

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